コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年3月28日

 またもや年月の経つ早さを感じる時期を迎えた。行く、逃げる、去るという言葉のゆえではないだろう。正月、短い2月、年度末と続くことから思うようにことが進まず、こうした言い方ができたようだが、ブラジルではカーニバルも加わり輪をかける。去りつつも記憶に残る3月の言葉▼「忘れないでほしい」。東日本震災から2年。被災地から高野桜さん(18、福島)、佐々木沙耶さん(同、岩手)が来伯、文協であった法要などで体験談とともにメッセージを送った。被災者の存在だけでなく、この2年間に私たちが感じたことも、だ。時の経つ早さと忘却を比例させてはいけない▼前出の高野さんは風評被害についても語った。古里福島の状況を受け世界の9県人会が初会合。ブラジルからは安全な食のアピールを提言、当地での販売支援を表明した。文協法要で涙ながらに故郷への思いを語った永山八郎県人会長は「何らかの形で手伝いたい」▼「祖母から聞いてずっと行きたかった」。森光マリアさん(70、三世)は初めて四国八十八カ所を回る。日本語が読めないのが気になるところ。迷うことで有名な遍路道だが、おばあちゃんを加えた〃同行三人〃で、人の優しさにも触れてほしい▼「暴力集団のように描かれるのは心外。歴史を正確に伝えて」。両親が保管していた臣道聯盟旗を山村保生さん(60、二世)が寄贈した。より多くの史料があれば後世の研究材料にもなる。「これを呼び水にさらなる寄贈を」▼忙しいときだからこそ、新聞をめくり直す余裕がほしい。ときおり紹介するように、そこには拾い上げるべき言葉の落葉がある。(剛)