コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年4月23日

 近所に住む日本人が、自己啓発に関する書籍を紹介する弊紙記事を読んだ後に、「ブラジル人は自己啓発をしない」「最近の人は思いやりがない」とのたもうた。加えて大豆などの穀物の収穫が増えても、輸送システムが整備されていないから輸出業務が滞り、取引停止問題なども起きるのだとも▼確かに中国からは大豆の買い付け契約破棄の通知がまた来たが、件の読者によれば、ブラジル人は綿密な計画を立ててそれを実行する事が出来ないのだという。穀物生産は10%以上増えたが、輸送能力はそれに合う速度で改善されていないという現実は、「先見の明のなさ」と指摘されても仕方がない▼一方、先週の「樹海」にリオ市がゴミのポイ捨てに罰金制定という話を書いた後に、日本にもゴミを捨てたら罰金という話があるかという問い合わせがきた。「日本人なら自然との共生などという考えも理解できるはずだ」と言われて調べてみたところ、残念な事に日本にも罰金はあった。しかも「公共の場所にゴミを捨てるという行為は、自分さえよければというエゴを反映したものだ」とのコメントまで付いた記事も▼件の読者は、日本人がブラジルに移住してきた事で自然を愛で大切にする思いや思いやりがブラジルに広まればと話していた。それを聞きながら、今の日本の日本人にかつてのそんな姿が残っているのか、ブラジルの日本人もその特性を保っているか—と問われた気がした▼自己啓発や緻密さ、計画性、先読みなどの言葉が喜ばれる日本に、自然と共生できる部分が減ったとしたら悲しい限り。でも「明治の日本が見たければブラジルに行け」と言われた当地の方は?(み)