リベルダーデに交番を=サンパウロ州軍警大佐がサンパウロ市視察コロニアの声に耳傾ける

ニッケイ新聞 2013年5月9日

 「リベルダーデに交番を」—。リベルダーデ文化福祉協会(ACAL)の池崎博文会長は先月22日、同区を視察に訪れた軍警の最高位、ベネジト・ロベルト・メイラ大佐にそう訴えた。就任は昨年11月。現在、サンパウロ市の状況把握のため全地区の巡回訪問を始めており、リベルダーデ区が最初の区に選ばれた。同日午前11時、ACALおよび地域治安協会(CONSEG)が東洋会館で、歓迎会をかねた意見交換会を開き、約30人が出席した。

 「商業の中心地でイベントも多い」「重要な日系団体が集中している」。
 小川彰夫CONSEG会長、野村アウレリオサンパウロ市議、サンパウロ商工会議所セントロ支部のジョゼ・アラリコ・レボウサス会長、広島県人会の大西博巳会長らが同区の重要性を次々に訴えた。
 池崎会長は「世界中の観光客が集まるのに、危険な地域と思われている」と遺憾を示し、1992年に作ったというイナウグラソン用プレートを見せながら、「古くから交番を設置する計画はあったが実現しなかった。是非力を貸して欲しい」と話した。
 同計画は、観光案内所もかねた、五重塔をかたどった交番をメトロ駅前に設置するというものだったが、市の建築基準に抵触するとして反対に遭い、実現には至らなかった。
 うなずきながら話に耳を傾けていたベネジト大佐は「観光地としての重要性はよく理解している」とした上で、「我々ができることは地域の状況を調べ、交番を設置できるかどうか検討し、確実な返事をすること」と述べるに留まった。
 同大佐によれば、サンパウロ州軍警の数は8万9千人でブラジル最大、南米で3番目の規模を誇る。しかし交番設置の要望はすでに2万7千件もあり、「各交番に5〜6人の警察官を配置するとしても、軍警の総数を超えてしまう」と言う。
 「全ての要望に応えたいのは山々だが、それが出来ない以上、人口、犯罪率、人口流動性、地域の特殊性の4つを考慮しながら、今いる人員をどう有効に配置するかを考えたい」と理解を求めた。
 サンパウロ市の治安状況については、「殺人率は11・5%と全州で最小、市民の感覚とは逆に、治安を図る尺度においてサンパウロ州は優秀だ。強盗数の多さが不安を煽っている」と分析。
 強盗犯人の9割を占める麻薬中毒者を減らすには麻薬流入の阻止が不可欠のため、「各機関がきちんと任務を全うしなければ問題は解決しない」と、各組織が連携して様々な課題の解決にあたる重要性を強調した。
 大佐はサンパウロ州の課題や軍警の取り組み等、半時間以上にわたって熱く語り、「状況を改善するには政治の力も必要。皆さんの協力が必要だ」と締めくくった。