藤之会に初の非日系師範=ファビアナ・サンシェスさん=25日に文協で授与式=芳之丞校長も絶賛「天才的」

ニッケイ新聞 2013年5月14日

 藤間流日本舞踊学校に通うスペイン系ブラジル人のファビアナ・サンシェスさん(45)が、入校4年という短さで、非日系初の「藤之会」の師範に認定されることが決まった。今月25日には、サンパウロ市文協で披露宴をかねた授与式が開かれ、藤間芳之丞校長から認定証が授与される。ファビアナさんは「師範と言っても、まだ何も知らないも同然。認定証は、もっと深く学ぶための機会と思って頑張りたい」と謙虚に喜びを語った。

 古典芸術を奨励する同校に対し、藤之会は若手に向けて新舞踊を取り入れた各種活動を推進する。ファビアナさんは5人目の師範。名取に一歩近づいた。
 芳之丞校長は「すごいよこの人。天才的素質がある。まだまだ力を引き出せる」と絶賛し、藤間芳翁会長も「彼女は日本舞踊が大好き。本当に努力してきた」と褒め称える。
 幼い頃からバレエをたしなみ、同会入会前は15年間、ダンス療法を行う2施設を中心にアラブ系ダンスを教えていた。「日本舞踊は見たことはあったけど、実際にやってみたら衝撃を受けた」と話す。
 「洗練された表現法が言葉にできないくらい魅力的。音楽も、別世界に連れて行かれるよう」。高齢を迎えると多くの人が辞めてしまう西洋系のダンスと対照的に、80、90歳になっても踊り続け、技術を高め続ける師匠らにも感銘を受けた。以来、ダンス講座を全て辞め、日本舞踊の習得に全てを注いできた。
 地面に両足をつけ、腰を落としたまま動く。緩やかな動きが殆どだが、一曲踊ると息が上がる。「練習の後はクタクタで、最初は地下鉄の階段も上れなかった」と笑う。
 「日本人じゃないのに難しいのでは」と言われることもあるが、「アートには国籍も時代も関係ない」と力説。「色んなダンス学校で教えたコネを活かしてブラジル社会に広め、芳之丞師匠の名を知らせたい」と意気込む。
 徐々にイベントで舞踊を披露する機会も増えてきた。そんな彼女の姿を見て興味を持ち、入校する非日系も増えている。日々の練習に日本語も必要と、日伯文化連盟(アリアンサ)にも通う。
 現在、25日のお披露目に向けて「俄獅子」を練習中。芳之丞校長は「これほど熱心な生徒には滅多に巡り合えない。将来が楽しみ」と喜んでいる。