コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年5月15日

 二世友人宅に最近、クレジットカード(以下Cカード)会社から電話が頻繁に来る。友人の妹AがCカード支払いを滞らせ、電話代すら払えず電話を切られたので、連絡先の友人に問い合わせが来るのだ。某大手衣料販売店網からも、Aが使った同店分割払いカードの支払が遅れているとの督促が友人に入るようになった▼Aは50代前半の二世女性で、93年頃から訪日就労して金融危機で解雇され、日本政府の帰国支援を受け3年前に帰ってきた。10年前ならCカードは審査が厳しく、一般庶民は使えなかったが今では無職の彼女すら持てる▼金利計算ができないAは帰伯後Cカードを〃打出の小槌〃のごとく使った。何度かAと話をしたが、正直言って〃日系カボクロ〃的な印象を受けた。この層にCカードを持てるようにしてテレビで消費を煽るのは、借金地獄への片道切符を渡すのと同じだ▼帰国支援策は当初「戻れない」との条件だったが、本紙始め多くのメディアが批判し、「3年を目処に見直す」という曖昧な条件になった。でも日本政府の本音は「戻したくない」に決まっている▼先日、帰国支援を受けて帰伯した21歳日系女性が、夫の住む浜松に行こうとしてビザが出ず、日本政府を訴えた。未成年の時に親の判断で帰国支援を受けたなら、特例としてビザを出したらいい。だが帰国支援受給者の多くがA的人物なら、日本に戻さない方が日系社会の評判を落とさずに済む▼日本には「タダより高いものはない」という格言がある。帰国支援を使ったら「戻れなくなるかも」と推測することは、それ自体が日本で生活する上での〃適性試験〃だったようだ。(深)