コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年5月22日

 米国のAP通信ブラジル支局が配信した「ブラジルの国産車は致命的(欠陥がある)」との記事が、当地で大反響を呼んでいる。19日夜放送された、クルツーラ局の外国新聞社特派員の討論番組に同記事を書いたAP記者が出演し、興味深いやり取りをした▼APの白人男性記者は「鋼材の品質、溶接の技術、エアーバック完備具合などが低く、衝突テストで多くが不合格。だから死亡事故が多い」と指摘し、「消費者が意識を向上させ、政府がしっかりと自動車会社を監視しないとだめ」と助言した▼それに対し、同局アナウンサーから「でも、米国の自動車会社自体がそういう車をここで作っているのはどうして? 同じ車種でもここで売っているのは、まったく別物ってことでしょ」と逆質問を受け、「その点に関しては私も米国人としても実に恥ずかしい」と釈明していた▼亜国クラリン紙特派員は「そんなこと別に珍しい話じゃないわ。南米にきて粗悪品を作って高く売ってボロ儲けしているのは、欧米企業の常套手段じゃなかったの?」と舌鋒鋭く畳みかけた。そのやり取りには、こと欧米マスコミが見下すようなことを書くことに対しは、南米側がめずらしく結束して反発する姿勢を見せている雰囲気がよく表れていた▼日本のメディアは一般に米国のことを「アメリカ」と表現するが、ブラジルの新聞テレビはあまりそう表現しない。「アメリカ大陸」とは南北米全体のことであり、自分達も含まれるとの認識があるからだ▼今回のAP通信記事への反応からは、同じ「アメリカ」とはいえ、北と南の間には深くて大きい溝が横たわっていることが如実に感じられた。(深)