コラム 樹海
ニッケイ新聞 2013年6月29日
教育と医療改善、減税やW杯への過剰? 投資の是正を求める国民デモが125万人規模にも膨れ上がり政府も困惑しきっている。大統領は訪日を中止、全国の知事を招集して対策を協議するなど対策を捻り出そうと一所懸命ながら、国民の怒りは治まりそうもなく、政治的な混乱は暫く続きそうな気配が濃い。近隣諸国もこの市民抗議の行方を懸念し始めたが、ここは一日も速い収束をと願いたい▼さて、ジウマ大統領が訪日していれば、原子力発電についての交渉も予定されていたし、これが絆となって新しい日伯関係の礎になったに違いないのだが、この好機が先送りになったのは何とも残念に尽きる。安倍首相は、原子力施設の輸出に力を注ぎ外遊先でもトップセールスに努めているが、実は「原発」については—自民と民主両党の最大の問題にもなっており、論戦が続く▼自民党は、原発規制委で「安全」が保証されれば、新設を含めて前向きの方向だが、民主党は「原発廃止」の意見を展開し、7月に迫った参院選の大きな争点になっている。尤も、この選挙の最大の焦点は今の「ねじれ国会」の解消が実現できるかどうかにあり、自民、公明の与党は参院での過半数獲得に全力を挙げているが、これの実現性は極めて高い▼先の都議選でも、自公の立候補者全員当選の奇跡としか言いようが無い椿事だったし、事前調査でも民主敗退の予測がある。先ごろの9電力株主総会でも、原発廃止の提案があったが、すべてが否決されている。経営陣は「原発に力を注ぎたい」と力強く表明し、国民の大多数も間違いなく—同じ姿勢であると見たい。(遯)