MCダレステ殺人事件=「防弾チョッキの使用を」=銃弾恐れるファンキ歌手たち

ニッケイ新聞 2013年7月23日

 6日にサンパウロ州カンピーナスでの公演中、ステージ上で射殺されたファンキ歌手、MCダレステの死以降、ファンキ歌手たちが身の安全を守るため、防弾チョッキの使用許可を求めている。21日付伯字紙が報じている。
 ファンキは近年のサンパウロ州のナイトクラブなどで高い人気を誇る若者音楽だ。ブラジルの経済的繁栄と共に人気を得た音楽ということもあり、歌詞の内容には、「オステンサン(自己顕示)」と呼ばれる、高級車や美女、高額な腕時計やきらびやかなアクセサリーなどについての夢を歌うものが見受けられる。
 だが、その一方、麻薬や犯罪についての過激な歌詞も見受けられる。射殺されて話題となったダレステの「アポロジア」という曲では「警察を殺すのが俺達の目的」とまで歌われていた。
 「オステンサン」スタイルの創始者とされるMCバイオG3は、ダレステの死を受け、犯罪の多い地域でのファンキの公演を減らさざるを得なくなったという。「ファンキの連中のほとんどがそういう貧しいところの出身だ。そこで金のない子供たちを相手にショーができるのは自分たちの誇りでもあるのだけれど」と語るバイオG3は、今後は公演先の地図と警備や救急車の配備を条件に歌うようになるという。
 バイオG3は他のファンキ仲間と共に州保安局のフェルナンド・グレラ局長と会い、陸軍が購入を許可する防弾チョッキを使用できないか、かけあうつもりだ。「自分たちは見えない敵の目にさらされている。誰が自分たちを狙っているのかさえわからず、怖いんだ」とバイオG3は語る。
 ダレステの前にもサンパウロ州では6人のファンキ歌手が殺されていた。5人はサンパウロ州海岸部のサントスで殺されている。また、サンパウロ市でも昨年、北部でMCブロウというファンキ歌手が殺されている。