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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年8月1日

 ブラジルで学んだことを挙げれば、「諦め」だろうか。ゴネ得が横行する現在の日本とは逆の価値観で社会が動いているこの国では、主張することが「暖簾に腕押し」に感じることが多い(昨今のデモの例外はあるが)。時間と労力の消耗を天秤の片方に乗せ「なかったこと」にするのも処世術の一つ。しかしその裏をかいてくる場合があり、修行不足の身を恥じることも▼組立式の食器棚を買った。配送日の指定時、「組み立ててくれるよね?」と確認すると「もちろん」と笑顔の親指。コラム子の不在中に配送され、ポ語の不如意な家人が受け取った。梱包されたままの巨大なダンボール箱を見て、即座に浮かんだのは「逃げたな…」だった▼何の迷いもなくドライバーを手に取った。電話でレクラマ、時間を設定、待ちぼうけーという状況が目に浮かび、自分でやったほうが早い、という判断を下したわけだ。真夜中に5時間、売り子の親指を折ってやりたい怒りを抑えつつ平常心を保った。まあ崩れはしないだろう…。何故か残った部品は無視し、眠い目をこすりつつも克己心に満ち溢れていた▼翌朝、「ボンジア!組み立てに来ました〜」とのインターフォンの声に耳を疑った。別の日に組み立てとの説明がなかったこともあるが、見事な諦め損。「一人でやったの? 部品が多くて難しいから仲間でも出来ない奴がいるよ。さすが日本人、今の仕事辞めたら連絡しろよ!」との言葉にすっかり気をよくした。幼少時のプラモデル経験がものを言ったか▼本稿を書いている前日、NETの設定4回目のすっぽかしを食らっている。まだまだ修行は続きそうだ。(剛)