コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年11月8日

 W杯を来年に控え、今年のサッカー界は「天国と地獄は隣りあわせ」を地で行く展開だ。例えば昨年末に日本で開催されたクラブチーム世界一決定戦で見事な粘り勝ちを見せたコリンチャンス。昨年はチテ監督の情熱的な指導の下、スター選手不在でもチームワークを練り上げて王座を掴んだ▼ところが今年は低迷を重ね、7日現在でなんと12位だ。ほぼ同じ選手陣、同じ監督であり、気持ちの持ち方次第では世界一にも、降格予備軍にもなれることを示した。ブラジル人の持つ潜在能力の高さと同時に、精神力の弱さを暗示したか。世界一という「誇り」を「驕り」に変えてしまう危険性だ▼08年に全伯選手権3連覇の偉業を成し遂げたサンパウロは、09年以来低迷し続け、毎年複数の監督を入れ替える異常な事態。2カ月前にムリシーが戻り、驚くような復調を見せている。監督次第でこうもチームが変わるという良い例だ▼昨年やはり全伯選手権で優勝を飾ったフルミネンセは、7日現在で16位とギリギリ(17位以下が降格)だ。「前年優勝で初めての翌年降格」という、ありがたくない史上初タイトルかと話題になった▼しかし、注目の的はミナス勢の台頭だ。ロナウジーニョという点睛を得たアトレチコ・ミネイロはまさに龍のごときしぶとさで、6月にリベルタドーレス杯初優勝を決め、南米一に輝いた。その宿敵たるクルゼイロも全伯選手権で優勝に王手、独走態勢に入った▼1部復帰決定の勢いに乗るパルメイラスと、かつて2001年には全伯選手権1部2位だったサンカエターノが3部降格直前というのも、まさに明暗を分けた。(深)