コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年11月12日

 インターネットで見た日本の月刊誌の記事に、「地域の子どもたちに目配りする『社会的親』」という副題のものがあった。「社会的親」は自分の子供の有無には関係なく、地域の子供達の事を気にかけて目配りする大人の事で、自分の子供の事しか考えない親は「私的親」だという▼件の記事は千葉県習志野市の秋津コミュニティの代表が書いたもので、地元の中学校の卒業生が在校生に金を持って来いと命じたカツアゲ事件が、その親達が動き始めた事で未然に防がれた事や、事件後に話を聞いた人が「何で知らせてくれなかった」「今度何かあったら俺も行くからな」と声をかけてきたという話も載っていた▼この記事を読んだ時、まだこんなコミュニティがあるんだと安堵する一方、ブラジルの高校で問題を起こした生徒の親に向かって、職員の一人が「他の学校に行けばいいのに」と言い放ったという話も思い出した。こちらの話を聞いた時は、教師と共に生徒を育み、見守る役目を負っているはずの職員がこんな言葉を発するのかと驚いた。だが、真ん中の娘は「ブラジルだよ」とそっけない反応▼米国に犯罪発生率が非常に低いスラムがあり、不思議に思った人々が調べたところ、同地域の小学校に生徒達を自分の子供のように愛しんで接した教師がいた事が判明したという話を読んだ事もある。もし、私的親ばかりで、子供達に問題があれば社会福祉士や警察が解決すべきと考える人ばかりなら、そのスラムも犯罪の巣窟になっていたかもしれない。ブラジル社会でも、社会的親やそんな大人に育てられた子供が増えれば、犯罪発生率が減ると考えるのはただの夢? (み)