コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年12月10日

 「南アフリカの父」ことネルソン・マンデラ氏の公式追悼式は本10日に行われ、ブラジルからもジウマ大統領やルーラ、カルドーゾといった大統領経験者らが参列。世界90カ国以上の首脳級人物が、マンデラ氏が公に姿を見せた最後の場、ヨハネスブルクのサッカー場に集まる▼同氏の死後初の日曜日となった8日には、同国全土の教会やモスク(イスラム教の礼拝所)でマンデラ氏追悼礼拝が行われ、「マンデラ氏は闇に輝く光だった」と語った牧師も居たという。27年半投獄された経験を持つ同氏は、「憎しみを学ぶ事が出来るなら、愛する事も教えられるはずだ」「あまりにも長く続いた人間の苦しみの経験からは、すべての人が誇りを持てる社会が生まれなければならない」といった言葉も残しており、国民は至る所で同氏の功績や人となりを偲んで歌や祈りを捧げた▼マンデラ氏同様の非暴力運動の指導者としてはマハトマ・ガンジー氏やマーティン・ルーサー・キング・ジュニア氏らの名前も挙げられるが、この2人は戦いの代償として命を失い、マンデラ氏は27年半の自由を失った。各指導者が目指したものは今もまだ完全には達成出来ていないが、マンデラ氏死去の報せに「巨星墜つ」と思った人は相当数居たはずだ▼刑務所収監中に結核などの呼吸器疾患を患い、石灰石採掘場での重労働で目を傷めたが、釈放後に行われた同国初の全人種参加選挙で所属政党が勝利し、大統領に就任、全民族融和の象徴とされ、「国父」と呼ばれてきた。10日の公式追悼式には世界中の民族が集まるが、これもまた、同氏が蒔いた平和への種が実を結んだ姿だ。(み)