在日ブラジル人がフィリピン支援=巨大台風災害に救援物資=4トンを50人が2日で選別=デカセギが助ける側に

ニッケイ新聞 2013年12月24日

写真=トラックいっぱいに詰まれた支援物資のダンボール(前列右から2番目が安富祖さん)

 11月8日にフィリピン中部に上陸し、多大な被害をもたらした台風30号「ハイヤン」の災害支援のために、NNBJ(全国在日ブラジル人ネットワーク)が即座に動き、水や食料、衣類など4トントラック1台分を1週間あまりで用意し、12月上旬にフィリピンへ送った。その時の様子を、神奈川県横浜市にある非営利団体ABCジャパン(橋本秀吉代表)の副代表、安富祖美智江(あそふ・みちえ、二世)さんに取材した。

 2011年に東日本で起きた震災後の支援活動のために、昨年末まで被災地へ何度も赴き、支援物資を届けたり、被災地の人たちをはげまそうと音楽等の娯楽をもって仮設住宅を訪ねたりした経験から、災害の知らせを受けて、NNBJ(全国在日ブラジル人ネットワーク)内で、すぐさま何かできないかとの意見が出た。
 同ネットワークは、リーマンショック後に日本国内のブラジル人コミュニティの代表者が集まって生まれた団体で、ABCジャパンが事務局や窓口を務めている。
 現地で一番必要性の高そうな飲料水、食料、衣類、生理用品、おむつ等の寄付をコミュニティに呼びかけ、1週間あまりで、4トントラック1台分の支援物資が集まったという。駐日ブラジル大使館も協力し、100足以上のゴム草履を提供した。安富祖さんは「集まった物資は、2日間で選別や小分けをしたが、50人以上が作業を手伝いに事務所を訪れた」と説明する。
 現在、フィリピン人は在日ブラジル人数を抜き、日本に在住する外国人のなかで3番目に多くなった。共に外国人として日本で生活し、国民性に共通するところがあるためか、南米出身者とフィリピン人カップルも珍しくない。同ネット—ワーク関係者にもフィリピン在住者がおり、そんな関係も手伝って、今回すばやい情報共有と物資の送付が実現したという。
 どう物資を現地へ送るのかが一番の問題だったが、駐日ブラジル大使館のコミュニティ担当とも相談をしながら、フィリピン向けに運輸サービスを行う会社と連絡をとることができ、11月末までという期限で物資を集め、12月の初旬に4トントラック1台分を、信頼できそうな現地の非営利団体をあて先にして送った。
 東日本大震災では複数の在日ブラジル人を中心とした団体が支援活動に従事し、その後日本の報道等でも取り上げられてきた。かつて日本の中で「要支援者」として扱われてきた人たちが、「支援者」側に回る動きが顕著になってきた。これは定住性と共に、「日本社会の一部」としての気持ちの高まりを示しているようだ。