花咲き実を結ぶ飛躍の年に=駐伯日本国特命全権大使 三輪 昭

新年号

ニッケイ新聞 2014年1月1日

 明けましておめでとうございます。

昨年は、戦後に移民が再開されてから60周年を迎え、改めて日伯協力関係の基礎を築かれた移住者の先人の軌跡やその子孫の皆様の活躍振りに思いを馳せた節目の年でございました。

1908年に始まった日本人の伯移住が戦争によって一時中断した後、1953年に17家族54名がアマゾナス州パリンチンスに入植し、戦後移住が始まりました。伯社会から高い信頼を得ている日系社会がこうした歴史の積み重ねの上に成り立っていることを、当国で迎える4度目の新年に実感しております。記念行事の御成功を改めてお祝い申し上げるとともに、運営に携わられた方々の御努力に衷心より御礼申し上げます。

戦後移住から60年。ブラジルは世界有数の経済大国且つ国際社会のグローバルパワーの一つとして、益々政治的・外交的影響力を増しており、それに伴い日伯関係も多様な分野で一層の深化を遂げています。

私は、更なる当国の発展と日伯関係の促進は、当地における日本人移住者と日系人の方々の歴史も示すように、二国間の人の交流・往来と当国の人材育成に懸かっていると考えます。この意味で、昨年は、二国間で人の往来が活発に行われ、人材育成に係るいくつかのプロジェクトも始動しましたので、今年は昨年蒔かれた種が花咲き実を結び始める飛躍の年となることを確信しております。

二国間の人の交流では、昨年は岸田大臣、茂木経産大臣そして新藤総務大臣が当国を訪問し二国間関係に進展が見られました。また、科学技術分野では、両国の科学者が多く参加する有人潜航調査船「しんかい6500」による海洋調査が実施された他、防災分野でも災害対策機能プロジェクトが開始しました。さらに、我が国は、伯政府の「国境無き科学」計画を通じ現在約100名のブラジル人学生を受け入れており、ブラジル人留学生が、帰国後に当国発展の重要な担い手且つ日伯の関係の架け橋として活躍することを強く期待しています。

また、造船分野では、我が国の造船業界の主要3社が当国に進出し、昨年ブラジルにそろい踏みしました。今後、プレサル油田開発等に不可欠な船舶の建造に携わり、経済社会全般に大きな変革をもたらすプレサル油田開発に我が国が貢献することになります。我が国は嘗てイシブラスを通じた経験から当国における「人材育成」の成功体験があり、また当国にもそれを受け入れる素地があることから、両国の造船分野の協力関係の強化が一層進むものと確信しています。

今年はサッカーワールドカップが開催され、その後2016年にはリオ・オリンピック、2020年には東京オリンピックが控えており、今後日本とブラジルの国民のお互いの国に対する関心が一層高まり、人的交流が促進されることが期待されます。これらを通じても、二国間の絆が一層強化されることを願ってやみません。

最後に、本年の皆様の益々のご健勝、ご活躍を祈念申し上げ、私の新年の挨拶とさせて頂きます。