マラニョンに恐怖走る=バス焼き討ちや警察襲撃=背景には刑務所内の抗争も

ニッケイ新聞 2014年1月7日

マラニョン州サンルイス市と隣のサンジョゼ・デ・リバマル市で3日、バス4台が焼き討ちに遭い、負傷者が5人出たが、全身に大火傷を負ったアナ・クララ・サントス・ソウザちゃん(6)が6日朝亡くなったと、4~6日付伯字紙やG1サイトなどが報じた。

アナ・クララちゃんらが被害に遭ったのはサンジョゼ・デ・リバマル市内のヴィラ・サルネイ・フィーニョで、バス襲撃した賊が乗客の所持品を奪い、車内にガソリンを撒いて火を放った。この事件では、アナ・クララちゃんの母親と1歳5カ月の妹の他、男性と女性各1人が火傷した。

アナ・クララちゃんは体表面積の95%に火傷を負い、6日朝6時45分に息を引き取った。母親は40%、妹は20%の火傷で入院中だが、命には別状はない。

バス襲撃事件はサンルイス市のペドリーニャス刑務所に3日に軍警や突撃隊60人が配備され、刃物や銃といった武器や麻薬、携帯電話などが押収された事に対する報復とされ、3、4日にはサンルイス市内の警察署2カ所が襲撃され、退役軍警が1人死亡する事件も起きている。犯罪組織関係者の通話の盗聴によれば、同州ではバス20台の襲撃計画があり、州都のバス職員組合は4日、午後6時~午前5時のバス運行停止を決めた。

警察はバスや警察署襲撃に関与したと思われる容疑者を次々に摘発。5日には11人、6日も午前中に6人が身柄を拘束された。

警察は電話の盗聴記録などから、ペドリーニャス刑務所内のジョージ・エンリケ・アモリン(21)が襲撃事件を指示、電話を受けたヒウトン・アラウージョ(27)が実際の襲撃を指揮したと見ている。アラウージョ容疑者は襲撃命令を受けた後、母親に「今日も明日もバスには乗るな」との指示を出している。

ペドリーニャス刑務所では、13年12月24日までに59人(国家法務審議会の報告では60人)の死者が出、米州機構が同州政府に殺人事件回避策の明示を要請。2日にも2人の遺体が発見され、3日に軍警や突撃部隊が導入された。4日には市警や軍警、消防、空中戦術グループも強化され、法務省も州政府に連邦刑務所への囚人移管を提案した。

同刑務所内では州都の犯罪組織「ボンデ・ドス・40」と市外の「マラニョン第一コマンド」「アンジョス・ダ・モルテ」の3組織が対立し、斬首や絞殺、槍様の物で何カ所も刺して殺す、生きたまま皮を剥ぐといった事件が頻発。抗争後は各所に遺体が転がるという衝撃的な映像が多くの人を驚かせた。収監者の家族が携帯電話や麻薬などを持ち込むのは日常茶飯事、自分の身を守るため、妻や妹に性を貢がせる犯罪者も多数いる。