コラム 樹海

ニッケイ新聞 2014年1月30日

 今や「マンガ」は世界の共通語だ。当地でも、非日系人の日語学習者に出会うことが度々あるが、動機を尋ねると半数以上は「マンガやアニメがきっかけ」と答える。「好きな作品を原文で読みたい」というのは自然な欲求だ。これを通じて日語学習者になった若者は、世界でも多い▼日本では、通勤途中の中年男性が電車の中でマンガを開いている光景は珍しくない。「マンガは子どもの読むもの」という昔の〃常識〃は今や時代遅れで、「たかがマンガ」と侮れないほど内容は高度・多様化している▼日本政府も「クールジャパン」と称し、マンガを含めたポップカルチャーの海外展開に本腰を入れだした。話者がほぼ日本国内にしかいない独自性の高い言語に海外の若者を向かわせるのだから、その秘めたるパワーは計り知れない。日本語の読み書きが驚くほど堪能な二世の知り合いから「言葉はマンガで覚えた」と聞いた数日後、バンカでポ語版マンガを漁る自分がいた。逆に、マンガの力でポ語力を上げたいと▼思えばマンガブームを疑いたくなるほど、マンガ本の当地での品揃えは貧相だ。東洋街の本屋ですら申し訳程度のところが多い。日本のように名作が全巻そろう店がない。マンガファンの嘆きが聞こえてきそうな現状だ▼品揃え豊富なマンガ専門書店やマンガ喫茶があれば若者のメッカにだってなるだろう。コスプレした店員に対応させたり、メイド喫茶的サービスを売りにすれば立派な観光名所だ。マンガ・アニメという餌をたらせば、日本文化に食いつく若者がいるかもしれない。部屋に空きのある県人会があれば、試しにマンガ喫茶はどう?(阿)