コラム 樹海
ニッケイ新聞 2014年2月8日
「欧米が正しい、西洋科学が正しいと皆思っていたが、そうじゃない!」。宮城県人会会館で開かれた講演会で4日、国際日本文化研究所教授の安田喜憲さんは口角泡を飛ばさんばかりに力説した▼同氏は環境考古学という新学問の創設者だ。福井県の水月湖で「年稿」を調査し、「地球規模の大変動が起こったのは1万年前」という欧米発の定説を覆した(詳細は7面)。「今や水月湖が〃過去のグリニッジ標準時〃」と安田さん。「日本が世界の標準になる日が来た」と会場に獅子吼した▼彼は科学という観点から欧米中心主義を批判したが、思えば生活全般がそうだ。戦後移民ですらNHKを見ながら「カタカナ言葉ばかりで意味がわからない」とこぼす。今の日本での会話はカタカナ英単語なくしては成り立たない。本紙では記事を書く時できるだけ〃純日本語〃を心がけるが、これが意外と難しい▼「欧米かぶれ」を意識しない程、日本の日本人の生活には欧米文化が浸透している。日本人は古来、外国文化を内包することで自らの文化を豊かにしてきた。それもやりすぎれば「言葉を通した文化の侵略」となる危険性を孕む▼移民が「子孫に日本語を」とうるさく言うのは、「言葉=文化」だと肌で知っているからだ。「NHKがわからない」という嘆きは、すなわち「祖国日本の方が変わってしまった」ことへの嘆きでもある。日本の日本人はその嘆きに耳を傾ける必要はないか▼当地移民のそんな嘆きは、日本人の心の奥に潜む欧米への劣等意識をはかる〃民族的〃リトマス紙(酸性度を測る試験紙)の役割をしているのかもしれない。(阿)