農業連携交流事業=イビウナ水耕・有機の現場へ=南米各国から50人参加=現場の状況に関心高く

ニッケイ新聞 2014年2月19日

水耕栽培を行う下田さん親子

水耕栽培を行う下田さん親子

中央開発コーポレーション(CKC、本社=東京都新宿区)が日本の農林水産省から委託を受けている『平成25年度中南米日系農業者連携交流委託事業』の一環で11日、ブラジルを中心にアルゼンチン、パラグアイ、ボリビアから約50人がサンパウロ州イビウナ市の農場視察などを行った。農水省から出向している在聖総領事館の遠藤諭副領事、文協・農業関連交流委員会の桂川富夫委員長も参加し、同地で水耕栽培を行う下田久夫さん(49、二世)、有機栽培を行う吉住マサミさん(50、二世)の農場を視察した。

下田さんは1997年から水耕栽培を行っており、レタスを中心とした葉野菜を栽培している。約60ヘクタールの農地の内、約35%が水耕栽培だという。従業員は約50人で、1日最大800箱を出荷している。

吉住さん(中央右)が有機飼料について説明する様子

吉住さん(中央右)が有機飼料について説明する様子

水耕栽培の長所を聞くと、「良いところ悪いところはそれぞれ。説明は難しい」と表情を曇らす。というのも「50日間まとまった雨が降っていない」と言い、最近の日照り(取材時)で実害は目前のようだ。

10年前には農地荒らしにも遭ったらしく、母の久美子さん(70代、熊本)は防犯対策として、「午後8時から午前5時まで、夜間は1人だけパトロールを配置している」と言い、それ以降は被害がなく「1人の人間が巡回するだけでも効果がある」と話した。

パラグアイから参加した木村広二さん(30、二世)は、「立派な設備に驚き。市場が大きいブラジルは、農場規模も大きくうらやましい」と感想を語った。

有機栽培の吉住さんは父親の農地を受け継ぎ、2000年から有機栽培に取り組んでいる。85ヘクタールの内15ヘクタールを使用。サンパウロ市以外にもリオやベロオリゾンテに出荷する。

有機飼料には、魚廃物、米ぬか、ミミズの糞、油を搾取し終えたゴマのカス、牛の骨粉などの自家製飼料を中心に使っているが、「有機栽培では薄利で多売できない。高価になるため市場では不利かもしれないが、無農薬野菜は必要なもの」と説明した。

熱心に視察したボリビアの佐渡山安幸さん(33、二世)は、「ボリビアはブラジルよりも有機栽培の技術が発達していない。飼料の材料や配合などが参考になる」と話した。

イビウナ農協(CAISP)の出利葉マルシオ会長(42、三世)は、「10年前には『今後多くの有機作物が生産される』と言われたが、今もそれほど多くない。徐々に増えてはいるが、通常の農家が農薬を減らしていることもあって、無農薬野菜の需要が高まっていないのでは」と、伸び悩みの様子を話した。