コラム 樹海

ニッケイ新聞 2014年2月19日

 昨年引退した英国の有名サッカー選手デビット・ベッカムが2月初め、米国マイアミのチームを買収し、プロリーグ参入を発表した。なぜ米国、しかもマイアミなのかとの疑問が湧いた▼67年に北米サッカーリーグが創設されたが、振るわず84年に解散していた。米国で「フットボール」といえば「アメリカンフットボール」のことであり、区別するためにわざわざ「サッカー」という名称を使う国柄だ。サッカーというスポーツは英国発祥であり、その植民地だった米国だけに、異なる独自文化をスポーツを通して醸成する必要があったようだ▼ところが米国W杯94年開催を起爆剤にして、96年にプロリーグが再結成された。9日のグローボエスポルテによれば、今度は中南米移民の増加と共にサッカーファンが激増しはじめた▼以来7回連続でW杯に出場する中で、現在では一試合平均の観客動員数ではアメフト(約6万5千人)、野球(約3万人)に次ぐ約1万9千人に成長した。なんとホッケー(1万7千人)やバスケット(同)を上回る▼この動員数は国別にみても世界8位の記録で、実は日本(13位=約1万6千人)、ブラジル(18位=約1万3千人)より多い。いつの間にか世界有数のサッカー市場を有する国になった。つまり、移民による国民構成の変化を象徴する現象が、サッカー隆盛だ▼米国サッカーチームは北東部や西海岸に多く、南部は中南米移民が多い割にプロチームがなかった。そこへベッカムが目を付けた訳だ。サッカーの観客動員数がアメフトを追い抜くころ、中南米移民出身の米国大統領が生まれるかもしれない。(深)