コラム 樹海

ニッケイ新聞 2014年3月12日

 在聖総領事館主催の「日系市長と若手日系リーダーとの交流会」で、小野ジャミール市長が言った「大農場主などの金持しかなれなかった市長に、農夫の息子の私が当選できたのは、ジャポネースへの信頼感が強いから」との言葉に感じ入った。福島県人会長時代と変わらない訥々とした話しぶりで「選挙運動に100万レアル以上使っただろうと良く聞かれるが、15万しか使っていない」という姿に日系政治家の矜持を感じた▼樋口マルコス市長も「州と連邦は、市の税収から上前をはねる。連邦はその金で巨額の政策を実行し、しかも会計監査は市に対するものよりゆるい」と市政の難しさを説いた。「市が地元ラジオで広報をしても2、3千レアルしか使えないが、連邦政府がいくらテレビ放送しても誰も文句を言わない」▼援協イッペランジア・ホームに免税許可を出さなかったスザノ市のトクズミ・パウロ市長には一つの先入観を持っていた。だが日系市長だからこそ、日系団体を特別扱いすると政敵から標的とされる。70件も裁判を抱える彼ゆえに免税にできなかったのだと痛感した。「日系政治家だから大丈夫」と厚意を期待できるほど政治情勢は甘くない。アラブ系などに比べれば百戦錬磨が少ない証拠でもある▼「政界の現実を知り、我々はもっとインテリジェンチになる必要がある」と言っていた市長がいた。ブラジル人政治家のマリシア(ずる賢さ)に対抗できるような、日系的な〃知恵〃を身に着ける必要がある。汚職蔓延の現実において、真面目さを売りにするだけでは、日系政治家はこの国を良くできない。今後の日系人全体の存在価値を深く問う箴言だ。(深)