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マデイラ川で歴史的水害=洪水と奮闘する日本人ら=「自然との共存意識を」=水が引くまであと2カ月

ニッケイ新聞 2014年3月22日
ポルトベーリョの水害(17日撮影、Foto: Adalberto Marques/ Integracao Nacional)

ポルトベーリョの水害(17日撮影、Foto: Adalberto Marques/ Integracao Nacional)

北伯地域が歴史的な水害に襲われている。ロンドニア州都ポルトヴェーリョでは、マデイラ川の水位が18・60メートルに達した2月27日に非常事態宣言を出した。その後も水位が上昇し、すでに20メートル近くに達した。そこから臨州につながる幹線道路BR364も途中で水没し、アクレ州都リオ・ブランコは事実上の〃陸の孤島〃となっている。北伯4州の広い範囲で、避難生活を強いられ、多くの日系人にも影響が出ている。ロンドニア州とアマゾナス州に在住する2人に電話及びメール取材を行った。ポルトヴェーリョに60年以上在住し、インターネットでポルトヴェーリョの状況を自身で発信する田辺俊介さん(65、鹿児島)が本紙の電話取材に応じ、現地の状況をこう語った。

「新来者は経験がないから、家が水に浸かって被害に遭う。長年この地に住む者は、大水が来たらどの辺が水に浸かるか分かっている。だから、この辺の日系人は十分な高台に家をかまえるなど、被害を最小限に抑えるようにしている」と冷静に分析する。旧来の居住者が手を出さない低地を、新来の侵入者が不法占拠し、選挙のたびにそれが合法化されて都市計画もなされないままに大きくなっていく現状に警鐘を鳴らす。

「一番大変なのは現場の農民」と定森さん(08年11月撮影)

「一番大変なのは現場の農民」と定森さん(08年11月撮影)

さらに増水した川で泳いで感染症にかかる危険についても、「教育がないために衛生知識が十分でなく、感染症などが広がる」と、今回の増水被害は半ば〃人災〃的状況も呈していると厳しくみており、「自然との共存をもっと意識すべき」と強調する。一方、アマゾナス州都マナウスからマデイラ川を330キロも上流にいったマニコレ市で、アグロフォレストリー(森林農法)導入等の活動を行うNGO職員の定森徹さん(46、千葉)は、「活動地域の複数の村が水没し、被害を受けている」と嘆く。

ヴァルゼアと呼ばれる低地は、雨季に水に浸かるから養分が補給され、地力が豊かだ。だからマニコレなどではヴァルゼアに多くの村があり、元から高床式の住居も多い。ただし今回はその床上まで水があがっていて被害が大きいという。

この地域では5年前から森林農法が導入され、その頃から取り組む農家はカカオ、アサイー、バナナなど数種の作物を栽培している。「バナナは冠水すると確実に枯れるが、カカオやアサイーは生き残るのでは」と定森さんは期待する。自然環境に近い、多様性のある作物を同じ場所で栽培する森林農法の知恵は、洪水にも強いことが証明されるかもしれない。

定森さんは「一番大変なのは僕らでなく、現場の農民。水が引き始めるまで2カ月ほどかかるため、食料、収入の途絶、衛生状況の悪化がこれからしばらく続く。僕らを応援してくれ、地元に農業再開を必要としている人たちがいる限り、自分ががっかりしている場合ではない」と語り、地元民と共に逆境に立ち向かう姿勢を見せた。

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