コラム 樹海

ニッケイ新聞 2014年4月11日

 移民の多くは人並み以上に税金を支払い、市政に相当詳しく、意見も持っている資本主義的には立派な〃市民〃だ。でもブラジル籍がないために民主主義の根本たる投票には参加できない不遇な〃国民〃ともいえる。でも先月30日、当地にきて初の投票体験をした。日本への在外投票でなく、当地の政治へのそれだ▼市民参加型評議会(本日7面に詳細)の外国人住民部門が設けられて選挙が実施され、サンパウロ市人口約1132万人(32区)のうち、外国人住民が人口の0・5%以上を占める19区から今回20人の代表が選ばれた▼全49人の立候補者のうち新来移民が多いセー区は最激戦区で、立候補者は11人を数えた。当日は1710人が投票し、セー区で唯一の日本人、小川朝彦(55、宮崎)候補は残念ながら落選し、補欠2位に終わった▼彼の祖父小嶋政一郎さんは宮崎県延岡市の小中高校の教諭、校長を歴任し、1957年から4年間滞伯し、リンスの日本語学校などで教えた人格者として知られる▼そぼ降るガロアの中、投票会場はボリビア人、中国人、アフリカ系住民でいっぱいで、セー区1位はセネガル人、2位は中国人と新来者が占めた。106年目を迎える日系はすでに旧来移民だと痛感した▼小川さんは当初、中国人候補とシャッパ(連記名簿)を組もうかと考えたとか。日中が〃共同戦線〃とは当地ならではの興味深いあり方だ。しかも小川票中、アフリカ系キリスト教会の神父が彼の友達でその黒人信者約30人が投票してくれたとか▼いずれ外国人住民が本当の市政選挙に参加するための前段階的取り組みとして期待し、歓迎したい。(深)