真宗大谷派後継者に暢裕氏か=ブラジル籍の暢裕氏が門首内定=「外国在住者の代表異例」 =6月の審議会で正式決定

ニッケイ新聞 2014年4月16日

讃仰の集いで挨拶をする大谷氏

讃仰の集いで挨拶をする大谷氏

 真宗大谷派(東本願寺=本山・京都)の次期門首に、大谷暢顕現門首(84)のいとこ、ブラジル在住の大谷暢裕氏(62、ちょうゆう)が選ばれる可能性が高いと産経新聞、朝日新聞などが5日、報じた。同派は親鸞開祖以来、750年の歴史を持ち、所属寺院数は約8千と日本でも有数の規模を誇る。同派で外国籍者が門首になるのは初めてだが、ブラジル別院南米本願寺の菊池顕正開教監督によれば「日本の宗教法人界を見回しても、代表的地位に外国在住者が就任することはきわめて異例」という。

 6月に行われる「継承審議会」で、門首後継者は正式に決定され、予算、決算、条例案などを議決する「宗会」で正式発表となる予定だ。

 親鸞の子孫が門首を世襲してきたが、現門首には子息がおらず18年間後継者が未定だった。また「終身制」であることから門首が逝去してからの就任となるようだ。

 「親鸞の血統にある最近親の男子」を門首にする規則があるため、暢祐氏の名が今回高まってきたようだ。同派に国籍に関する規定は無く就任に問題はないという。門首は僧侶や門徒の代表で「象徴」的な存在。実務は宗務総長が行う。

 暢祐氏の父暢慶氏(ちょうきょう)は前門首の弟。52年にブラジル別院南米本願寺を立ち上げるため、開教使として渡伯した。その時、暢祐氏はまだ1歳だった。

 暢祐氏はブラジル籍を取得すると共に日本国籍を離脱。サンパウロ州立総合大学(USP)を卒業し、航空技術研究所(ITA)に物理学研究者として昨年まで務めていた。

 1992年に得度し、親鸞750年遠忌のあった2011年に門首の有資格者として「内事僧籍簿」に登録され、門首補佐の「鍵役」、海外布教強化のため新設された「開教司教」に就いた。僧侶として法要などに出仕したことはないが、大学時代には仏教青年会に参加して僧侶や門徒と交流してきた。

 毎日新聞によれば、今年3月、里雄康意宗務総長(65、さとお・こうい)が来伯し、後継者就任を要請、暢祐氏は「非常に重い責務だが、努力してお受けしたい」と応じたそう。暢祐氏は現在「春の法要」のため日本へ渡っており、今月18日に帰国予定。

 取材に応じた菊池開教監督は「当地に開教してから約60年。世代が変わり仏教に対する感心が薄れつつある」と現状を憂慮しつつも、「11年の開教司教新設など海外布教への取り組みが変わってきたように見える。暢祐さんが門首になられたら、さらに活発化するかもしれない」と喜びを語った。

 暢祐氏は日本語、ポ語、英語が堪能で、スペイン語も話せる。性格は気さくで気軽に声をかけあえ、にこやかに抱擁をする人だという。同寺では、後継者決定の正式な通達が出るまで関連した行事や取り組みを行う予定は無いとしている。

 門首来伯は52年、66年、07年の3度のみ。いずれ門首としてブラジルに〃凱旋〃することが期待される。