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組合過激派の危険な兆候

 選挙の年でW杯直前である今を〃ゴネ時〃とみた組合の一部過激派が造反を始め、管理が利かなくなりつつある。とても危険な兆候だ。例えば20、21日にサンパウロ市市民を大混乱に陥れたバス運転手と車掌のストは、組合でなく、一部過激派がやった▼従業員組合はすでに企業主らと給与10%増で合意済みなのに、一部の組合員が33%増にこだわって造反した。この過激派造反の傾向は今年に入って特に目立つ▼カーニバル直後の3月初め、リオのガリ(清掃人)組合は給与9%増で市と妥結するところを、一部過激派が承認せずにストに入り、結局は過激派の37%増の主張を市が呑む悪しき先例を作ってしまった。ごね得の実例を見た他業界の過激派は「今なら行ける」と勢いを得たようだ▼その背景には、政治風土に少数派への強い配慮があることも関係する。PT政権期に増長した組合や社会運動家の過激な分子が、政治家が妥協しやすい今を狙って次々に造反を始めている▼民主主義は国民が選挙で代表を選ぶシステムであり、投票はすなわち「多数決」だ。より多くの支持を得た者が代表になり、たとえ自分が選んだ人でなくても選挙結果を認めるのが民主主義だ。ところが当地ではその意識が発展途上だ。選挙で選ばれた人物の主導権を認めるという原則に反した過激派は、本来なら罰されるべきだが、逆に甘やかされてきた▼「少数派」の特徴は過激化することだ。ブラック・ブロックしかり。大衆の支持を得られなくなった社会運動は先鋭化、暴力化することで目立とうとし、さらに市民から遊離する。W杯中にそれが起きるとやっかいだ。     (深)

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