W杯日本代表=完全敵地でコロンビアに大敗=クイアバ競技場は黄赤一色=「初戦から今の勢い欲しかった」

仲良く記念撮影する両国のサポーターたち(アンジェロ・イシさん提供)

仲良く記念撮影する両国のサポーターたち(アンジェロ・イシさん提供)

 【酒井大二郎記者=クイアバ発】W杯グループステージで日本代表は24日、マット・グロッソ州都クイアバのパンタナール競技場でコロンビア代表と対戦し、1対4で敗れた。「ラ米のコッパ(W杯)」と称されるほど中南米代表チームが次々と決勝トーナメント進出を決める中、この試合会場も8割近くがコロンビアを示す黄色と赤で染まる完全なアウェー(敵地)の環境だった。日本から駆け付けたサポーターや地元ブラジル人らの熱い声援もむなしく、日本チームは完敗を喫して敗退が決まった。

 「ヴァモス・コロンビア!」。サンパウロ市を早朝に発った旅客機がクイアバ国際空港の滑走路に着陸した瞬間、一人の乗客が発した掛け声とともに、大きな拍手が機内に沸き起った。機内がすでに〃アウェー〃状態と化していた。競技場に向かう路線バスは黄色いユニフォームで溢れ、スペイン語の応援歌が車内に響き渡る――。
 地元住民の多くが味方に付き、日本により大きな声援が送られたレシフェ(対コートジボワール)、ナタル(対ギリシャ)での過去2戦から一転、隣国コロンビアからサポーターが大挙したこの日の試合は、3戦目にして初めて日本代表にとって〃完全アウェー〃の雰囲気に包まれた。
 「コロンビア!」と地鳴りのように響くの声援は、秩序だった日本の応援コールをかき消してしまうほど。それでも競技場には、地元民を中心とした日本を応援するブラジル人の姿も目立った。
 2000年代初期の日本代表のユニフォームを着て来場したクイアバ在住の医師エウデル・ルスさん(34)は、「1カ月だけだけど、父が日本に滞在していた。自分は実際に訪れたことはないけれど、新聞やテレビでいつも日本のニュースを気にかけている。今日は父が日本で買ってきてくれたこのシャツで、日本代表を応援するよ」と力強く話した。
 「剣道をきっかけに日本文化に関心を持った」という大学講師のジョアン・ヌネスさん(37)も、「今日は日本が勝つ」と友人とともに気勢を上げていた。
 前回の試合から8人の選手を入れ替えたコロンビアに対し、日本チームは序盤から積極的に攻めたが、鋭いカウンター攻撃に対応しきれず、PKによる失点で出鼻をくじかれる。前半終了間際にFW岡崎慎司が得点し同点で折り返すものの、後半開始から主力選手を投入してきたコロンビアに地力の差を見せつけられ、大敗を喫した。
 そんな選手のピッチ上での闘志に、物足りなさを感じる声が観覧席では聞かれた。98年のフランス大会から5大会連続の観戦となった松木まりさん(48、東京)は、「大会を通じて勝利への執着心が足りなかったように見えた。最初から今日の前半くらいの勢いを持ってやれていれば…」と肩を落とした。
 終了後、力が抜けたようにグランドを見つめていた自営業の石毛大己さん(42、神奈川)は「残念すぎる」とポツリと呟いた。「強いチームは、決めるべきエースがきちんと点をとって勝っている。それが出来なかった日本は、やはり個の力がまだまだ足りていないということ。4年後の次の大会に向け、顔を上げていくしかない」と振り絞るように話していた。
 W杯前の本紙取材に対して、「ずばりベスト4を期待」といっていた呂比須ワグナーさん(元日本代表、クリシウマFC監督)もコロンビア戦の後、「とても残念な試合結果だ」と電話でコメントした。「ゴール前の決定的場面で、シュート機会を逃す場面が多すぎた。日本代表が本来持っている能力がまったく試合に出ていなかった。もっと良い結果が出せたはず」と落胆した様子だった。