准看護師遺棄事件=容疑者の中国拘束1カ月に=ブラジル送還で代理処罰か

 【共同】大阪市西成区の准看護師岡田里香さん(29)が遺体で見つかった事件に関与した疑いが持たれている元同級生の女(29)が、中国・上海で身柄を拘束されてから6月27日で1カ月となった。西成署捜査本部は死体遺棄容疑などで逮捕状を取り引き渡しを求めているが、女がブラジル国籍であることが壁になり、なお実現していない。
 警察庁によると、1970年以降、外国から日本に引き渡された容疑者は34人いるが、中国からは日本人1人のみ。今回のように、中国に対して外国籍の容疑者の引き渡しを求めた事例は「承知していない」という。
 昨年末時点で、国外に逃げている容疑者は798人おり、うち650人は外国人だ。大阪府警のある捜査員は「ほとんどに逃げ得を許してしまっているのが実情だ」と明かす。
 大阪府警によると、元同級生はことし4〜5月、岡田さんの遺体を東京都八王子市のトランクルームに遺棄したほか、岡田さんに成り済まして旅券を不正に取得した疑いが持たれている。
 引き渡しが実現しなければ強制退去処分となり、国籍のあるブラジルへ送還されるとの見方が強い。ブラジルは憲法で外国への自国民の引き渡しを禁じており、日本側は捜査資料を提供して処罰を求める「代理処罰」を要請する可能性がある。
 捜査本部は中国からの移送に備えて周辺捜査を続けており、ある捜査幹部は「なんとしても自分たちで容疑者を取り調べ、真相を明らかにしたい」と意気込んでいる。
 中国の司法制度に詳しい一橋大大学院の王雲海教授は「中国の裁判所が、ブラジルではなく日本への引き渡しが妥当だと判断する可能性はある。そのためには、日本に生活実態があり、重大な犯罪に関わった疑いがあると、日本側が証拠に基づき強調できるかどうかが鍵だ」と話した。