安倍晋三首相の〃置き土産〃=交流、日語、医療で大幅支援=観光ビザ免除に向けた一歩も

 中南米訪問を行なった安倍晋三首相の〃置き土産〃といえる日系人支援やビザに関しての施策を、在聖総領事館(福嶌教輝総領事)が発表した。文協大講堂での首相の演説内容は、来場者の熱気を受けてその場で逸話中心のものになったが、来年が日伯外交関係樹立120周年であることから、日系人に対する交流を盛り上げ、日本語教育の普及支援を行っていく方針だった。
 具体的には、毎年JICAが派遣する約60人の日系社会青年・シニアボランティアを、来年から約100人に増員する。日本語、日本文化、福祉、スポーツなどの指導に大幅な増援が見込まれる。
 若い世代の日本への関心を高める次世代日系人指導者招聘制度(外務省指導者研修)に関しても拡充が決まった。これは1965年に始まった日本政府による招聘制度だが、7年間中止され、昨年再開したばかり。この人員や滞在日数を増やす方向だという。
 総務省が2007年12月、廃止を含め抜本的に検討するとしたJICAのなどの日系社会次世代育成研修(旧『日本語学校生徒研修』)は、5年間の陳情活動が実って12年にようやく継続が決定していた。現在中南米から50人招聘されているが、今回の支援策により100人への倍増を図る方針だ。
 日本語教育全般への支援増加に関し、日本語センターの板垣勝秀理事長は「総理のお言葉は本当に心強い。ボランティア増員は嬉しい。ただ、当地在住の日本語教師の育成の方も条件緩和などを考えてもらい、同様に力を入れていただければ更にありがたい」と喜びの声を挙げた。丹羽義和事務局長も「非常にありがたい。それに応えられる事務局の足腰を鍛えなくては」と語った。
 また日本政府は、日伯友好病院やサンタクルス病院を「日本の先端医療技術のショーウィンドウ化」する方針を見せており、さらに機材導入を支援し、当地の医療水準の向上に貢献する見通しだ。
 二国間の交流促進に資する取り組みとして、ブラジルの一般旅券所持者に対する観光ビザを含む数次査証の導入も決定している。その手続きには2カ月程度かかると見られているが、今後、観光ビザを一回取れば、数年間、何度でも出入りできるようになる。
 これまでの事例(タイ、マレーシア)ではこの数次査証導入の数年後には、査証免除措置を実施することが多く、福嶌総領事は「将来の観光ビザ免除への一歩となる重要な取り組み」だと強調した。
 これは、昨年来伯した鈴木英敬知事が全国知事会議に提案したブラジル人の短期滞在数次ビザ交付の早期導入要請が奏功し、首相来伯にあわせて発表された。