樹海

 日本発祥の新興宗教「生長の家」が、日本をしのぐ勢いで当地の信者を増やしている。日本の一新興宗教がなぜ、とかねがね疑問に思っていたが、先日取材で訪れた「特別講演会」で教えに触れ、少し腑に落ちた▼生長の家の特徴の一つは「全ての宗教の真理は同一」と説く点にある。だからキリスト教徒であれイスラム教徒であれ、同団体の活動に参加するのに信仰を捨てる必要はない。まるで移民大国ブラジルのように、全てを飲み込む一種の懐の深さがある▼また、その教えは一見仏教的だが、実は当地で盛んな心霊主義(スピリチュアリズム)とよく似ている。心霊主義は古代から連綿と続いてきた「霊魂の不滅」を研究する思想だ。それによると、人間は死んで消滅するのではなく、輪廻転生を繰り返しながら魂を磨く。ブラジルでは、霊媒を介して死者と交流する交霊会を記録・研究したことで心霊主義の創始者と仰がれる、19世紀の哲学者アラン・カルデック(仏人)が広く支持されている▼当地には「良いと思うものは何でもやる」と、いくつもの宗教団体に顔を出す人が少なくない。多人種・多文化を地で生きる彼らにとって、信仰すらも唯一絶対のものではないかのようだ。幸せになることが人間の究極の目的なら、宗派の違いから争って、どちらが「本物の神」と戦うよりも、当地式に各宗教の〃いいとこ取り〃をして幸福になる方が実は賢明かも▼現状はともあれ、あらゆる異質なものが共存共栄するブラジルには平和的な〃土壌〃がある。特別講演会で谷口総裁が「世界平和をブラジルから―」と呼びかけたのも、少しばかりうなずける。(阿)