第56回慰霊祭を粛々と=世界平和祈る靖国ド・ブラジル=「千鳥ケ淵も祭ってほしい」

 靖国ド・ブラジル(浜口松原イネス晴海会長)は第56回慰霊祭を3日午前9時半から、サンパウロ市のイタリア戦線従軍記念館で行い、約100人が参拝した。当日は空軍第4軍司令官マルセロ・カニテ・ダマスセノ中将、陸軍西南方面軍参謀司令官の池田リュウゾウ少将、陸軍西南方面軍参謀のレニ・ノゲイラ・ドス・サントス中佐も制服で参列し、厳かにイタリア戦線出征兵士の御霊に祈りをささげた。
 上妻博彦祭主は「志遥けく思いは固く、七つの海を越えてブラジルに住まいて」と重々しく祝詞を奏上した。浜口会長は祭文の中で、「日本国を護って散華した英霊、ブラジル国発展の礎となった開拓移住者、戦争や争い、自然災害、貧困、飢餓、不正、病苦に苦しむ世界の方々に、一日も早く平和が訪れますように」と祈りをささげた。
 靖国神社の徳川康久宮司からのメッセージが「先人の労苦に思いを致し、尊崇の念を継承することは日本民族としての責務であり、今日までその活動を絶やさずに続けてこられたことに深く敬服する次第です」などと代読された。
 感謝の気持ちを込めて参列者から玉串が神棚に捧げられた。イタリア戦線に出征した二世兵士の最後の生き残り児玉ラウルさん(97)は、「日系兵士は30、40人は戦線にいた。彼らのためにこのようにミサをしてもらって本当に嬉しい」と延べた。
 戦後移民の谷口範之さん(89、広島)は「慰霊の最中、爆雷を抱えたまま機関銃掃射でなくなった仲間を一瞬思い出した。そんな名前の分からなくなった戦死者は千鳥ケ淵(戦没者墓苑)の方に祭られている。そちらの方もぜひ慰霊してほしい」としみじみ語った。谷口さんは太平洋戦争で、第百十九師団歩兵連隊機関銃中隊に入隊し、満州国の北西部・免渡河で戦い、シベリア抑留も経験した。
 下本八郎副会長は最後に「祖国のために戦った勇者はみな、我々のために死んでいった。来年はもっとたくさんの人に参拝してほしい」と閉会の言葉を述べた。