靖国献詠歌に13人入賞=大志万の学生も大健闘

 靖国神社が「創立記念日祭」と「みたま祭」に合わせて毎年実施する献詠歌・献詠句において、ブラジルから56人が応募し、13人が入賞した。窓口となった靖国ドブラジルの浜口イネス会長らとともに5人が本紙を訪れ、喜びを語った。

 初応募にして見事受賞した足立富士子さん(69、愛知)は、6月29日に同神社であった受賞式にも出席。「普通は入れない本殿まで入れさせてい頂いた。あんな感激したことはない」と目を輝かせる。
 あらくさ短歌会に20年。「人生の区切りを駅に例え、下車せずに前に進み続けたい、やりたいことを思いきりやってときめいていたいという思いを込めた」と話した。
 渡伯80年という杉本絃一さん(89、山口)は、「9歳になったばかりの春、移民船に乗る前に兄と二人で夜桜を見たのを思い出して詠んだ」と振り返った。
 松柏・大志万学院からは、2012年の訪日使節団に参加した名和裕貴ウィリアン、丸藤小川恵市ウィリアン、駿藤西松千恵美パトリシアさんが入賞。3人とも16歳の三世だ。百人一首を覚えたり短歌を作ったりと、授業で格式ある日本語にも触れているという。
 名和君は「短歌は自分の考えを表現できる所が好き。自分の生涯を通して命が変化する様子を旅に見立てた」と話し、初受賞に笑顔を見せた。
 同会理事の上妻博彦さんは、「大勢受賞してびっくり。若い人の純粋な気持ちが感じられた」と祝福した。
 受賞作品は次の通り(敬称略)。
【献詠歌】
◎ふるさとの松茸山の見ゆる駅まだまなうらにブラジルに住む(香山和栄)
◎八十年前に移民と降り立ちしルス駅いまも人の行き交ふ(梅崎嘉明)
◎古稀といふ駅に下車せずときめきを乗せて短き旅に出でたり(足立富士子)
◎ブラジルが終着駅のわが胸に短歌の線路を敷きてたどらむ(山岡秋雄)
◎喜びと悲しい感じめぐりあひ出会ひと別れ駅はすてきね(名和裕貴ウィリアン)
◎人命は旅と同じだかく駅で変化していくけしきのやうだ(丸藤小川恵市ウィリアン)
◎からっぽな私の心どこにある心やすらぐ私の駅は(駿藤西松千恵美パトリシア)
【献詠句】
◎竹伸びて竹の皮脱ぐ真珠光(浅海喜世子)
◎流燈や見えずなりても見送られ(菊地信子)
◎郷愁の色に咲きたる桜かな(杉本絃一)
◎幸あれど悔をかみしむ夜半の秋、牡蛎むきて厨は遥かな海の香に(武田知子)
◎たもとほる母亡き里の蝉しぐれ(富岡絹子)
◎花冷えの空どこまでも青きまま(脇山千寿子)