原野拘束を州政府謝罪すべき=アドリアノ・ジョーゴサンパウロ州議=「原爆は市民虐殺の戦争犯罪」

 「原野秀樹は何の証拠もないのに、組合関係や活動家の間では知られた存在だったから、見せしめのために政治的に逮捕された。まるで軍政の頃を思わせるようなやり口だ」。18日に来社したアドリアノ・ジョーゴサンパウロ州議(65、PT)は、そう憤った。
 拘置所の原野さんに面会した唯一の政治家だと自認し、「日系政治家はもっと原野の件を問題視する発言をしてもいい」と嘆く。軍政時代に活動家として拷問を受けた経験があり、この種の事件に敏感に反応する。
 「爆発物を持っていなかったことが証明されことに関し、1カ月以上も拘留したことを州政府は謝るべきだ」と手厳しい。「原野は解放されたが安心はできない。原野はまだ告訴されている最中であり、実刑判決を受ける可能性もある」と警告する。「彼はマスクもせず、ただ参加していただけ。この裁判が結審するまで4、5年かかる。その間、原野はどんな抗議行動にも参加できない。これはキツイ処置だ」と指摘する。
 「W杯前後から軍警は急に態度を硬化させ、原野の件にも見られるような不当拘留も辞さない方向になった。この事件で、何もしていないのに拘留される可能性があるとの危機感がデモ参加者の間に生まれ、参加者がすごく減った。証拠もなく逮捕され刑事裁判にされる可能性があるという状況はおかしい」と語り、ジョーゴ州議は「民主的なデモ行動や言論の自由が脅かされている」と危惧する。
 日系とのつながりに関して「日系人や日本の歴史には学生時代から強い共感を持っていた」と振り返る。父がポルトガル系、母がイタリア系移民で、移民子孫としてルーツを大切にしてきた。
 長崎・広島の原爆投下に関しては学生時代に調査してから、「何十万人もの非戦闘員、市民を虐殺した非人道的な兵器だ。それに沖縄の上陸戦でも無数の一般人を虐殺した。本来なら戦争犯罪を扱う国際法廷で裁かれるべき案件」と憤ってきた。「日系政治家は保守派が多く、あまり原爆や米国の戦争犯罪について語らないのが残念だ」。
 軍政時代の人権侵害を追求する真相究明委員会のサンパウロ州委員長として、「ヴァルガス独裁政権時代の日本移民迫害」の公聴会開催を決断し、国レベルの同委員会の代表者から謝罪を引き出すことに尽力した。同州議はブラジル近代史の中に日本移民史を位置付ける重要な役割を果たしてきた。
 日系人への共感は厚いが、連邦下議に立候補している10月の選挙では「私に日系票が入らないことは重々承知している」と笑い飛ばした。