実は日本文化に造詣が深いレミンスキー

 写真を見るとクィーンのフレディ・マーキュリーに雰囲気が似ていないこともない詩人の故パウロ・レミンスキーは実験的な詩を書き、ヒッピー世代のカウンターカルチャーを象徴する人物の一人だったようだ。文学好きの友人の中では好きだという人が多く、書店でもよく著書を見かける人気の詩人だ。今年生誕70周年を迎え、出身地クリチーバでは記念の催しが行われた▼活動の幅が広かったレミンスキーは、実は日本文化との関わりもあった。柔道の黒帯所持者で、日本語を学びポ語訳もしていた。しかもその選択が渋く、三島由紀夫の自伝的随筆『太陽と鉄』を翻訳しており、松尾芭蕉の伝記も書いた。ブラジルで人気の詩人は、三島や芭蕉をどのように表現したのだろうか▼日本移民の歴史は106年になるが、移民やその子孫が登場するブラジルの文学は、イタリアやドイツ移民等に比べると少ないと言われる。だが、近年ではデカセギのアイデンティティ模様を描いたブラジル人現代作家による小説などもある。日系人の存在感は、当地の文学界でも着目されるようになってきたのかもしれない▼現代日本文学のポ語訳も、意欲的な翻訳家の活躍で増えてきた。しかし、まだ出版されていない『人間失格』のポ語訳を校正しているという友人は「英語からの翻訳で、日本語がわからない人が訳したみたいで間違いが多すぎる」とぼやいていた。翻訳の質に徹底してこだわるか、少々の誤訳はあってもされることに意義があるとみるか、意見は分かれそうだが、両国の価値ある文学がより紹介され、広く浸透することを願うのみだ。(詩)