第5回全伯俳句大会=714句から特選12句=席題総合点1位は小斎棹子、佐古田町子2氏

 ブラジル日本文化福祉協会(木多喜八郎会長)が主催する「第5回全伯俳句大会」が8月10日午前9時から文協ビルの13、14号室で開催された。兼題部門は「冬季一切」、5句投句。投句総数は714句、投句者数は143人だった。特選には◎印がついた12句が選ばれた。他は秀作が108句。選者は12人で以下、アイウエオ順となっている。

■青木駿浪選
◎万象の音納めたり寒夕焼(サンパウロ市 西山ひろ子)
拓魂を秘めしあばら家虎落笛(マウア・ダ・セーラ 上口一歩)
枯野道流離の愁いきわまれり(サンパウロ市 西田はるの)
貝殻を敷き詰めし鉢五月花(ソロカバ 前田昌弘)
好きな事ありて倖せ寒椿(ポンペイア 須賀吐句志)
清貧の明るき子等や木藷汁(マウア・ダ・セーラ 上口一歩)
蔓サンジョン喜怒哀楽の語り草(サンタマリアーナ 斎藤勝利)
パイナ吹く異国に余生授かりし(サンパウロ市 高橋節子)
支え合ひ生きる喜び冬温し(サンパウロ市 原はる江)
洗いたる大根行儀よく並べ(スザノ 藤田朝日子)
■伊那宏選
◎大枯野貨車渡り切るまでを見ず(クリチーバ 西朋子)
捨てし夢捨て切れぬ夢木の葉髪(サンパウロ市 西山ひろ子)
もてなしの一皿があり冬ぬくし(サンパウロ市 畔柳道子)
冬ごもり子にさとさるる事多し(サンパウロ市 伊津野静)
群れ翔ちぬグァタパラ低地通し鴨(グァタパラ 黒澤しが子)
寒雀お前も連れを無くしてか(アチバイア 吉田繁)
点ほどの地主となりて移民の日(ボニート 佐藤けい子)
開拓者地の塩となれ移民祭(サンパウロ市 森川玲子)
彩彩(いろいろ)の落葉の煙一と色に(ポンペイア 須賀吐句志)
膝毛布掛け晩学の辞書を引く(サンパウロ市 鈴木文子)
■浦畑艶子選
◎又しても亡き子を語る炉辺明り(サンパウロ市 吉田しのぶ)
今宵またなんのかんのと玉子酒(ピエダーデ  小村広江)
冬の海帰心ゆさぶる沖の船(サンパウロ市 大原サチ)
育てあぐ妻の手あれてけふの菊(カンポ・グランデ 鈴川麦秋)
肌寒し遠隔操作の知能犯(サンパウロ市 西田はるの)
ささやかな白寿祝いの燗熱く(サンパウロ市 伊津野静)
ゆずらるる娘の席ぬくし寒の夜(サンパウロ市 斎藤白憂)
一人子の独りごと言ふ日向ぼこ(モジ 浅海喜世子)
植えられしレタスの赤ちゃん冬日射す(ボニート 佐藤けい子)
老人ホーム訪いし家族も日向ぼこ(カンポス・ジョルドン 鈴木静林)
■小斎棹子選
◎厳寒の地より終の地アマゾンへ(トメアスー 三宅昭子)
白テープちぎれしからの移民の日(サンパウロ市 馬場照子)
寒灯下寡黙に慣れし月日かな(サンパウロ市 馬場照子)
冬がすみ小さな夢もあってよし(サンパウロ市 宮腰陽子)
点ほどの地主となりて移民の日(ボニート 佐藤けい子)
店頭に栗梨柿の東洋街(サンパウロ市 木村まもる)
旅をする祖父母の国や冬ぬくし(リベイロン・ピーレス 西川あけみ)
病ゆえ手離すシャカラ柿落葉(SBカンポ 西谷晃)
冬の句座一人で動ける杖の友(サンパウロ市 太田映子)
アマゾンに冬めく季節欲しかりき(パラー 下小薗昭仁)
■児玉和代選
◎移民の日祖母のぬらした枕かな(リベイロン・ピーレス 西川あけみ)
着ぶくれて構えることもなく老いて(サンパウロ市 玉田千代美)
幾山河耐えた証しや珈琲熟る(クリチーバ 遠藤幸雄)
母の日や母の写真は少なかり(サンミゲール・アルカンジョ 大橋松代)
おでん煮て今日も昨日のままの卓(サンパウロ市 玉田千代美)
幾百の移民が果てし枯野行く(ヴィトーリア 藤井ひろすけ)
冬耕や夜は作業衣つくろって(ボニート 佐藤けい子)
ブラジルの冬が沸騰W杯(サンパウロ市 二見智佐子)
残り火が解る歳や焚火跡(サンパウロ市 浜田一穴)
臨終の父が母呼ぶ霜夜かな(サンパウロ市 山本英峯子)
■笹谷蘭峯選
◎薪で煮る鍋一杯の冬野菜(モジ 檀正子)
支え合い生きる喜び冬温し(サンパウロ市 原はる江)
洗いたる大根行儀よく並べ(スザノ 藤田朝日子)
凍て蝶の触角うごく陽射しかな(サンミゲル・パウリスタ 伊津野静)
言はづとも通じる老夫と日向ぼこ(サンパウロ市 原はる江)
厳寒の地より終の地アマゾンへ(トメアスー 三宅昭子)
虎落笛薬缶笛ふく一人の夜(サルト・デ・ピラポーラ 百合由美子)
膝毛布掛け晩学の辞書を引く(サンパウロ市 鈴木文子)
点ほどの地主となりて移民の日(ボニート 佐藤けい子)
息の合ふ夫婦の振子フェジョン打つ(サンパウロ市 猪野ミツエ)
■富樫羽州選
◎よくぞまあこれまで生きて移民の日(サンミゲル・アルカンジョ 広瀬美知子)
捨てし夢捨て切れぬ夢木の葉髪(サンパウロ市 西山ひろ子)
平和へと第九奏でる冬温し(サンミゲール・アルカンジョ 織田真由美)
冬耕や土の匂を懐かしみ(モジ 星川としい)
史料館壁いっぱいに黄イペー(サンパウロ市 新井知里)
W杯平和の鳩を冬空に(サンパウロ市 西谷律子)
十七字つづる生きがい冬の句座(オルトランジア 堀百合子)
ふくよかな日本茶香る冬の朝(リベイロン・ピーレス 澤田みち子)
夢追いし若き日もあり冬日浴ぶ(サンパウロ市 木村ときえ)
新天地に放り出されし移民の日(サンパウロ市 水野昌之)
■富重久子選
◎蔓サンジョン喜怒哀楽の語り草(サンタマリアーナ 斎藤勝利)
臨終の父が母呼ぶ霜夜かな(サンパウロ市 山本英峯子)
湯加減を聞かれ山家の冬至風呂(サンパウロ市 吉田しのぶ)
寒灯下寡黙に馴れし月日かな(サンパウロ市 馬場照子)
稲刈られ切株黒く冬田あり(パリンチンス 戸口久子)
枯野道流離の愁ひきはまれり(サンパウロ市 西田はるの)
冬耕や土の匂を懐かしみ(モジ 星川としい)
放し飼ふ地鶏大きな寒卵(ポンペイア 田中菊代)
一書架は時代小説冬ごもり(サンパウロ市 伊津野静)
まがり角君は右へと冬帽子(サンパウロ市 田中美智子)
■樋口玄海児選
◎麦熟るゝブラジルパラグヮイ畑つづき(ロンドリーナ 渡部チエ)
凩の聴くことまれな国に住み(サンパウロ市 森川玲子)
安らぎの俳句たしなむ移民の日(サンパウロ市 平間浩二)
フェジョアーダベゼタリアーナ孫のいて(ポンペイア 佐々木友江)
アマゾンに冬めく季節欲しかりき(パラー 下小薗昭仁)
冬温しマリアが歌ふ子守歌(サンパウロ市 串間いつえ)
厳寒の地より終の地アマゾンへ(トメアスー 三宅昭子)
わが家はグロバリゼーション冬温し(サンパウロ市 佐古田町子)
混血はなべて美人よ冬のバラ(オルトランジア 堀百合子)
子や孫の故郷は麻州麦熟るる(カンポ・グランデ 渡部チエ)
■広田ユキ選
◎牡蠣むきて厨は瀬戸の海の香に(サンパウロ市 武田知子)
 わが家はグロバリゼーション冬ぬくし(サンパウロ市 佐古田町子)
また一人名簿から消す冬の夜(サンパウロ市 西谷律子)
又しても亡き子を語る炉辺明り(サンパウロ市 吉田しのぶ)
町小春夫に買ひくる赤いシャツ(サンパウロ市 鈴木文子)
パイナ吹く大正人も薄れゆき(サンパウロ市 大原サチ)
一書架は時代小説冬ごもり(サンパウロ市 伊津野静)
待春や来る度孫のたくましく(ポンペイア 須賀吐句志)
愛人の日もなく野良にありし頃(サルト・デ・ピラポーラ 百合由美子)
煮凝りや溶けて忘るる憂さならず(サンパウロ市 武田知子)
■星野瞳選
◎煮凝りや溶けて忘るる憂さならず(サンパウロ市 武田知子)
ブラジルに子孫の栄え移住祭(サンパウロ市 高橋節子)
清貧の明るき子等や木藷汁(マウア・ダ・セーラ 上口一歩)
幾万の移民が果てし枯野行く(ヴィトーリア 藤井ひろすけ)
よくぞまあこれまで生きて移民の日(サンミ アルカンジョ 広瀬美知子)
町小春夫に買ひくる赤いシャツ(サンパウロ市 鈴木文子)
九十の坂は進度い春を待つ(サンパウロ市 高橋節子)
星冴ゆる宇宙の塵と人の逝く(ピエダーデ 小村広江)
山茶花や一期一会の茶会かな(サンパウロ市 太田映子)
今年又妻恋ふ人に石路の花(サンパウロ市 中川敬子)
■間嶋稲花水選
◎移民の日父の背中が道標(セザリオ・ランジェ 井上人栄)
捨てし夢捨て切れぬ夢木の葉髪(サンパウロ市 西山ひろ子)
今宵またなんのかんのと玉子酒(ピエダーデ 小村広江)
歓迎会知事も驚く蓮料理(カンポ・グランデ 鈴川麦秋)
ぶどう接ぐ移民の大志胸に秘め(マウア・ダ・セーラ 上口一歩)
根深汁俳句の道は生きる道(サンパウロ市 西田はるの)
健康が何より宝納豆汁(サルト・デ・ピラポーラ 百合由美子)
泣き言は生涯いわず木の葉がみ(サンパウロ市 重川房子)
人生はこれからだよと葡萄接ぐ(セルタネージャ 太田正孝)
寒がりの娘が買って来し酒の粕(スザノ 寺尾芳子)

【席題部門】原爆忌、磯遊び、珈琲の花(春季一切)3句投句。投句総数は147句(投句者数は49人)。特選には◎印で、4句.次点は○印で4句、他は秀作の32句。選者は4人でアイウエオ順。
■杉本絃一選
◎春眠や深き眠りの菩薩顔(サンパウロ市 平間浩二)
○句友てふ余生の縁あたたかし(サンパウロ市 小斎棹子)
余生楽しむ人等の笑顔句座の春(サンパウロ市 三原芥)
靖国の御霊に柏手桜咲く(サンパウロ市 香山和栄)
花コーヒー鄙の乙女は青春期(サンパウロ市 湯田南山子)
自衛権問はるる祖国原爆忌(サンパウロ市 鈴木文子)
イペー咲く夫養国の土となり(サンパウロ市 太田映子)
早起きは健康法と囀れる(サンパウロ市 菊地信子)
祈り継ぐ永久の平和や原爆忌(サンカルロス 富岡絹子)
ブラジルに終る余生やコーヒー咲く(サンパウロ市 広田ユキ)
■富重久子選
◎春暖炉斜視のモナリザ吾に向く(サンパウロ市 佐古田町子)
○年毎の約束やさし桜咲く(サンパウロ市 小斎棹子)
降る雨は涙雨かも原爆忌(ソロカバ 前田昌弘)
和服より季節がこぼれ花衣(サンパウロ市 武田知子)
人の名を聞いて忘れて春朧(サンパウロ市 佐古田町子)
包丁の手を止め祈る原爆忌(グァタパラ 脇山千寿子)
春灯す詩歌の命永かりし(サンパウロ市 小斎棹子)
南瓜蒔く百姓下手な一移民(セーラ・ドス・クリスタイス 樋口玄海児)
レモンの木働き蜂の総出かな(サンパウロ市 建本芳枝)
吾が遺影きめて安堵の春浅し(ピエダーデ 小村広江)
■星野瞳選
◎夢語る端から消えて春の虹(サンパウロ市 中川敬子)
○ピラセーマ始まって居り里の川(セーラ・ドス・クリスタイス 樋口玄海児)
生き足りて顔つくろはず春惜しむ(サンパウロ市 武田知子)
春暖炉斜視のモナリザ吾に向く(サンパウロ市 佐古田町子)
薫風や天つ乙女の舞ひそうな(サンパウロ市 串間いつえ)
父の日の父を使ふてはばからず(サンパウロ市 西森ゆりえ)
遠き日の夢見し移民珈琲の花(サンパウロ市 平間浩二)
春昼のピアノの音色アベマリア(サンパウロ市 吉田しのぶ)
ブラジルに終る余生やコーヒー咲く(サンパウロ市 広田ユキ)
真青なる桜花の空に出逢ひけり(サンパウロ市 鈴木文子)
■間嶋稲花水選
◎ブラジルに終る余生やコーヒー咲く(サンパウロ市 広田ユキ)
○花コーヒー父母の苦労の汗のあと(サンパウロ市 浦野マルガリーダ)
句友てふ余生の縁あたたかし(サンパウロ市 小斎棹子)
首相夫人愛でしカルモの桜かな(サンパウロ市 星野瞳)
花ぐもり文協句会なごやかに(サンパウロ市 駒形秀雄)
花コーヒー念腹句碑も古りにけり(スザノ 藤田朝日子)
軍服の父の遺影や原爆忌(サンパウロ市 柳原さだ子)
被爆手帳形見となりしヒロシマ忌(サンパウロ市 吉田しのぶ)
イペー咲く夫養国の土となり(サンパウロ市 太田映子)
デザウトはコッコの水よ里乾季(セーラ・ドス・クリスタイス 樋口玄海児)

✩ 席題総合得点
1位=サンパウロ市 小斎棹子(13点)
1位=サンパウロ市 佐古田町子(13点)
2位=サンパウロ市 鈴木文子(12点)
3位=モジ 浅海喜世子(11点)
3位=サンパウロ市 広田ユキ(11点)
4位=サンパウロ市 平間浩二(8点)
4位=グアタパラ 脇山千寿子(8点)
5位=サンパウロ市 西森ゆりえ(7点)
5位=スザノ 藤田朝日子(7点)
5位=サンパウロ市 吉田しのぶ(7点)(同点はアイウエオ順)