樹海

 日系候補者討論会でモリ・ペドロ下議候補が「法律が多すぎて、かえって大半が守られない状況になっている」と語っていた一言が、心に残った▼「MIGALHAS. COM.BR」サイトによれば、2012年に連邦・州議会で可決された法案は実に6234もあり、一日平均なら17だ。10年間続けば6万以上、誰がその法律全体を知っているのか―と首をかしげたくなる。市議会レベルを入れれば、もう天文学的な数だ▼同年の連邦議会は197、州議会で可決法案が最多だったのはミナス州の602、サンパウロ州は9番目で273。こんなに多いのは「可決法案が多いほど政治家が仕事をしている」と解釈する風土があるからか。でもそれ自体どこかおかしい▼モリ候補が疑問を呈したように、法律を増やすのは簡単だが守らせるのは難しい。もし国民の教育水準が上がり、監視員を配置して守らせてきた法律内容が、言わなくても実行される〃常識〃となったら、その法律は削除されてもいい。本来は「文明が進むほど法律は減るべき」という気がする▼ウィキペディアによれば法律の根本であるブラジル憲法(1988年版)だけでも72カ所が修正された。現在も6カ所の修正法案が審議中。憲法本体が終戦直後の46年、軍政開始後の67年、民政移管後の88年の3回も作り替えられた。いわば歴史の節目ごとに新しくなっている▼思えば日本の憲法は戦後一度も変わらず、修正すらない。70年も経てば時代は変わる。第9条を変えて「戦争をしろ」と言っている訳ではないが、それ以外の点にも不都合はないのか。ブラジルは変わり過ぎかも知れないが、変わらないのも不自然だ。(深)