21日の『CIATEコラボラドーレス会議』でブラジル戸田建設の奥地正敏副社長は、建設業界は11年の東日本大震災における復興受注、アベノミクスによる公共事業増、そして五輪需要が重なったことで「著しい人手不足に直面している」と強調した。
「国立競技場の改修費は約1300億円で、会場や選手村など全関係施設の工費は4500億円ほど。経済効果は10兆円規模とも言われるが、人材不足は顕著で、政府試算では15年から20年の東京五輪までに、のべ15万人が不足している」という。そんな中、外国人だけで最大7万人を補うという方向で動き出しているようだ。
日本で培った技術等を開発途上国へ移転し、人材育成の支援を目的とする「外国人技能実習制度」に関し、日本政府は今年4月、建設業界に限った緊急対策として、所定の3年間を最大6年まで延長すると発表。15年度から東京五輪までの暫定措置だが、外国人実習生の門戸を広げる施策を開始する。
その恩恵を受ける一例がベトナムでの職業訓練校だ。中堅の向井建設(本社=東京)が12年から関わる同校は、「技術者を派遣し、技能の習得だけでなく日本語の読み書きも教育する」というもの。技術だけでなく日本語の読み書きも指導し、人材育成を図っている。今年3月には日本政府が、JICAを通じ政府開発援助(ODA)の1億円供与を決め、「技術者不足を補う動きとして期待される」と話した。
ただし現場とは多少温度差があるようだ。「群馬県建設業協会が、2月に実施した会員アンケートで、『外国人労働者を受け入れるか』に対し、賛成は37%」と慎重な構え。危険性の高さが影響し、積極登用を避けたい意向が表れている。
建設業は派遣会社など仲介を通じての就労が不可能となっており、参加者を前に「定住ビザを持つブラジル日系人は、必ずしも前述の実習制度を利用する必要がないため魅力的」と期待し、「定住ビザ非保持者も、積極的にCIATEで求人情報を見てほしい」と呼びかけた。
海外日系人協会の森本昌義理事が国際的人材として日系人にかける期待を次のように語った。
「日本産業界の浮沈は国際舞台での活躍次第」とし、国際的人材に必要な能力に「知識と経験、各国の文化・歴史などの学識、世界情勢への関心、コミュニケーション能力、敏感な価値観、他人種との共存」を挙げた。その中で「日系人が日本の企業で勤務する場合に、いくつかの問題点がある」と指摘した。
さらに「不平等な報酬、出世に難など日本人と比較すると不利な場面もある」と問題視し、国際化を目指す日本企業に向けては「社員の地位を向上させるため現場をより重要視すること、国際的人材を登用できるよう雇用基盤を構築すること、社内全体で国際感覚を培うこと」と助言し、「将来的には法整備が進み、外国人がより働きやすくなるはず。皆さんは日本企業の国際化に向け、重要な役割を持つ」と語り、工場労働以外の日系人の日本企業における役割の重要性を強調した。(終わり、小倉祐貴記者)