旧態依然のマラニョン州に最左翼知事の意味
今選挙で最も興味深かったのは、ブラジル共産党(PCdoB)初の州知事が、最も旧態依然とした〃サルネイ王国〃マラニョン州で生まれたことだ。最も遅れた州が、最も左の候補を当選させた対比の激しさがブラジルらしい▼当選したフラビオ・ジーノは勝利宣言の会見で「我が州は新しい頁を開き、ようやく21世紀になった。マラニョンはいつもコロネリスモで独裁主義だった。民主主義で共和制の時代を生きよう」と二度も涙で中断させた▼同共産党は連邦では連立与党だから本来は、連立与党PMDBの重鎮サルネイを支持する側だ。それゆえフラビオはPSDB支持のもとに戦うという捻じれの図式を生んだ。でも彼の政策はボウサ・ファミリア、低所得者住宅建設、メイス・メジコス等の州版で連邦にそっくり。明らかにPT親派だ▼サルネイは66年に同州知事になって以来〃支配〃してきた。特に91年以降、エジソン・ロボン(現鉱山動力大臣、PMDB)1期、娘ロゼアナが4期16年も州知事を務めている。今選挙では同大臣の息子がフラビオの敵対候補だった▼サルネイは元ジャーナリストで、メディアの政治利用を誰よりも心得ている。彼は大統領任期中に1028件、当時の31%に相当するテレビ、ラジオ設立許可を出した。文盲が多かった当時、耳で聞くメディアを牛耳ることは選挙の要だった▼サルネイ家は73年に地元ジア紙(現マラニョン州紙)を買収し、80年代にミランテTV局ラジオ局も作って勢力を拡大、敵対候補を盛んに攻撃してきた▼共産党は弱小だけに新州知事は簡単に成果を出せない可能性があるが、彼に期待する州民の声は大きい。(深)