謀略渦巻く決選投票の裏側

 「決選投票はまったく別の選挙」と識者は口をそろえるが、まさしくその展開だ。マリナの勢いが失速した分、反PT派の国民の期待がアエシオに集中している。良くも悪くも選挙の怖さは、このノリだ▼本来は、時間をかけて政策論争を国民に浸透させ、どちらの方針が良いかを選ばせるのが選挙だ。でも実際はプロパガンダ(政略宣伝)が多い。マリナはそれで勢いをそがれたから確かに効果はあるが、それを重ねても建設的な成果は出ない▼例えばPTは、マリナに対し「中央銀行を自律させたら、大銀行に経済を牛耳られて国民の食卓に食べ物がなくなる」、アエシオに対し「本拠地のミナスで州民から見放された候補に、どうしてブラジル全体を任せられる?」といった中傷レベルのTV宣伝を平気で繰り返す▼その一方、アエシオが言う「任期5年再選禁止」は可能なのか―などの具体的論争は深まらない。権力者が固定すると汚職の温床になるという考え方だが、一部論者は「左派取り込みのために言っているだけで、連邦議会でそんな法案が通る訳がないと本人は百も承知のはず」と批判する▼マリナが自分の主張の幾つかをアエシオに呑ませた上で支持表明したことを「選挙で勝たずして政権を牛耳る行為」となじる声も聞いたが、逆に「アエシオは呑んだ振りをしているだけ。議会で通るかは別問題」と切り捨てる識者もいた▼謀略が渦巻く中、「マリナは一次投票翌日、ジウマとアエシオに勝利を祝し、健闘を祈る電話をした。そんな誠実さ、繊細さが他の政治家にはない」と経済評論家ミリアン・レイトンが感激しながら語っていたのを聞き、少しだけ清々しい気分になった。(深)