エクアドル=補習校が初の合同運動会=キト校から総勢37人参加=グアヤキル校で盛大に=教育の悩みも語り合う

 【エクアドル発=秋山郁美通信員】キト補習授業校は18日、校外学習で初めてエクアドル最大の都市グアヤキル市を訪れ、同地の補習授業校(植木嘉弘校長)の運動会に参加した。両校生徒は玉入れや綱引き、パン食い競争など日本独特の競技で競いながら交流を深めた。夕食会では両校の父兄らが日本語や教育上の悩み事をざっくばらんに話し合い、同志としての絆を強めた。

ムカデ競争で楽しむ子どもたち

ムカデ競争で楽しむ子どもたち

 キト校は毎年近郊で一泊二日の校外学習を行っているが、今年は7月の日本まつりでの出店で予想以上の大きな収益をあげられたため、念願だったグアヤキル行きを決意し、生徒と家族、講師ら含め総勢37人で一泊二日の旅となった。
 グアヤキル校では3度目の運動会だが、キト校の生徒はほぼ初めて。戸惑いながらも7種目の競技を楽しんだ。普段標高2800メートルの涼しいキトで生活しているキト校一行には想像以上の猛暑。カメラで我が子を追う父兄も汗だくになった。
 キト校の唯島明仁さん(16)がお礼の言葉を日本語とスペイン語で述べ、「綱引きや踏ん張る顔の玉の汗」と即興の俳句を披露した。また両校が「となりのトトロ」の「さんぽ」を一緒に歌い運動会は閉幕した。
 キトからは小滝徹日本国大使や石川輝行領事が駆けつけ、両校の交流を祝った。夜は夕食会が催され、石川領事のほかキト、グアヤキル両日本人会会長の武田正弘さんと古木寛治さんが親睦の深まりを祈念して盃を交わした。両校が混ざって席に着いたテーブルでは、父兄が学校運営や日本語の勉強の試行錯誤を語り合った。
 キト校は02年度をもって日本の文科省から日本人学校指定を解除され、補習授業校として運営されてきた。年々長期滞在者が増えるにつれ、日本語を使う家庭が減り、ここ数年はスペイン語で説明をしないと授業がままならない学年も出てきて悩んでいる。
 一方グアヤキル校は71年から補習校として運営されており、キトに比べ地元に留まる日系人が多いことから、現在の生徒の父兄にも同補習校出身者が多い。植木校長自身も同地生まれの二世で、同校で日本語を学んだ。自身の子供3人も同校在籍中だ。「三世になると日本人かエクアドル人かはっきり決められなくなるから、なるべく小さいうちから日本語に触れさせないと」と考え、11年に海外子女教育振興財団の援助を得て幼稚部を開設した。
 11年に6人だった生徒は14人になり、20年くらいまではこの数字を維持できるとみている。クラスは幼稚園、小学校低学年、高学年以上と大まかに分け、遊びやビデオなども取り入れ工夫する。毎週土曜日に通うのを嫌がる子はほとんどいないと言う。
 植木校長は「駐在する企業がなく新しい日本人がいない。父兄が講師をしているから授業料はかからないが、その分簡単に欠席する」と問題点を挙げる。校長も授業を受け持っているが「外国人向けでもない日本人向けでもない、真ん中の日本語の教え方を毎週考えている」と話した。
 キトでも日本人の親を持つ未就学児童が増え、幼稚部開設を求める声が聞こえるようになった。小学高学年以上の学年では、日本で勉強するようにはいかない中で、補習校ではどうやって日本の教科書を利用して学ぶかが課題になっている。
 同じ国内でも自然や生活などさまざまな面で環境が違うが、今回の交流をきっかけに補習授業校のあり方や、子弟への日本語教育という共通の議論で仲が深まりそうだ。