県連ふるさと巡り ペルー=115年経て受け継がれる日系魂=(7)=運動施設の地価は3億ドル=大統領も出た優秀な日系学校

ラ・ウニオン校を紹介する安慶名さん

ラ・ウニオン校を紹介する安慶名さん

 リマ市内観光後は、日系人が運営する総合運動場「AELU」(Associacion Estadio la Union)という一種の日系スポーツ・クラブを訪れた。一行を迎えたのは沖縄系三世の支配人安慶名フェリペさん(52)。浅黒い肌に人の良さそうな笑顔を浮かべ、一行を引き連れて広大な敷地を丁寧に案内した。
 「第2次世界大戦の後(1950年)、一世の農家グループが土地を買って作りました。面積は9万7000平方米ほど」という広大な敷地は、見渡す限りAELUの施設が並んでいる。
 障害者福祉施設、プール、イベント会場、ゲートボール場、運動場、4つのサッカー場、幼稚園、野球場、体育館、テニスコートなど夥しい数のスポーツ施設のほか小中学校まである。会員数は約9千人(3千家族)。会費は家族で月50ドルだが、20年間払い続けると65歳以降は無料になる。こうした会員が1千人いるという。
 小ぶりの日本庭園には、1967年に天皇皇后両陛下が植樹した松の木が天高くそびえている。その奥には国内2番目の規模という農協「アエルコープ」。スポーツ、教育、福祉における貢献を通したリーダーの育成を目的に掲げるAELUは、ペルー日系社会の中心的施設であり、憩いの場となっている。
 「土地を買った時は5万8000ドルだったけど、セントロに近くて便利なので今では3億ドルの価値があります」という。創立者はこれだけの資産価値がいずれ生まれると知っていたのか。その英断に、先人の先見の明が光る。
 続いて敷地内にある、安慶名さんも通ったというラ・ウニオン校を訪問。彼の父親は創立会員の一人だった。「1971年に設立された小1~中5までの生徒千人が通う私立校で、オジャンタ・ウマラ大統領も8年通っていました」という大統領〃お墨付き〃の学校だ。
 リマの学校はA~Eの5ランクに分かれており、無料の公立校は最低のEランク、月謝が500~千ドルの私立はAランク、月謝280ドルの同校はBランクに属する。教育の質の高さが評判を呼び、「78年当時は2%しかいなかったペルー人が、今では60%を占める」ほど、現地人の入学が増えている。
 見学後は、敷地内のレストランで食べきれないほどのペルー料理をお腹一杯に詰め込み、交流を楽しんだ。厚いもてなしに感動した参加者らは、安慶名さんと固く握手を交わし、記念撮影をした。
 夫が沖縄県民という玉城道子さん(76、青森)は、「ここは沖縄の人が多いから結束が強いんだね。サンパウロは人数は多いけど、こういうものないもんね。ペルーに来た甲斐があったわ」と感心した様子で話した。(つづく、児島阿佐美記者)