文協統合フォーラム=日伯交流の可能性を探る=大使講演、首相来伯で緊密化=3年で900人のブラジル人受入れへ

 日系社会の活性化を目指す「文協統合フォーラム」(西村リカルド実行委員長)が15、16の両日、サンパウロ市文協の貴賓室などで行われ、サンパウロ州はじめベレン、ブラジリア、ベロ・オリゾンテなど全伯各地から約100人が参加した。梅田邦夫駐伯日本国大使、海外日系人協会の森本昌義理事、デブリット・プロパガンダ社のアリムラ・ヘンリ・ユウゾウ理事、日本酒ソムリエのイシイ・セウソ氏4人の講演とワークショップを通し、参加者らは互いの交流を深めると共に、「ブラジルと日本の繋がりにある無限大の可能性」をテーマに今後のあり方を探った。

ワークショップの様子

ワークショップの様子

 初日の開会式後、梅田大使が「日伯交流の展望」をテーマに、安倍晋三首相の来伯の成果や今後の課題ついて語った。首相は帰国後、ブラジルとの戦略的パートナーシップ構築を目指し、世耕弘成副官房長官をトップとするフォローアップ委員会を設立し、ブラジル、中南米との関係強化に向け議論を進めている。梅田大使は「特に医療面の協力関係を強化したい。ANVISA関係者を日本に招き、医療機器の迅速な認可もお願いしている」と述べた。
 また、これまで手付かずだった防衛・安全保障面での交流が始まったほか、穀物輸送用インフラ改善に向け、6月から伯省庁・日本企業・日本政府機関による会合が3回に渡り行われている。
 ブラジルへの支援としては交番制度の全伯普及を支援するほか、産業人材の育成に向け、自動車や造船など7つの分野で、3年間に900人のブラジル人受け入れを行うという。
 日系社会については、「我々は日系人を外交資産とみなし、再評価している」と述べ、既報のJICA青年・シニアボランティアと次世代育成研修の増員に加え、「日系社会育成リーダー研修や国費留学生、国境なき科学の留学生も徐々に増やしたい」との希望を表明。ジャパン・ハウスはじめ、全国各地の日本祭りや日本語教育も強力にサポートする意向を示した。
 日伯外交樹立120周年記念事業については、日伯両国で放映するNHK特別番組の制作がほぼ決定していることも明らかにした。
 続く森本、アリムラさんの講演後、参加者はグループに分かれて意見交流が行なわれ、進出企業の外国人差別や、日系若者の日本文化への無関心等が課題に上がった。
 長年当地で公教育に携わり、東海大学(東京都)でブラジル人学校の教員養成講座を担当した溝口茂代さん(68、三世)は「在日ブラジル人は文化的、人間的に発達が阻害されている。これからはデカセギや、デカセギ帰りの人たちのために何かをしたい」と意気込みを新たにしていた。
 コチア青年連絡協議会の第一副会長、広瀬哲洋さん(66、三重)は「コチアでも二世の会を作ろうと思っている。フォーラムは若い人の考えが分かるのでとても良い事業だ」と話した。

森本元ソニー社長も講演=「デカセギ帰り取り込んで」

海外日系人協会の森本理事

海外日系人協会の森本理事

 文協統合フォーラムでは元ソニーブラジル代表取締役、海外日系人協会理事の森本昌義氏も講演し、「日本人からみた日系人」をテーマに、日系社会および日本のグローバル化について述べた。
 文協に対しては「デカセギから帰ってきた人の一部は日本に幻滅しているが、皆伝統文化には感銘を受けている。文協は一、二世が中心だが、デカセギを取り込んで非日系への普及に力を入れるべき」と提言した。
 日本については「日本人は英語=グローバル化だと思っているが、大事なのはブラジルのように『価値観の多様性』や『柔軟性』を持つこと」と話し、「外国人を二級労働者として扱うやり方と、責任の所在が不明な満場一致という物事の決め方を変える必要がある。年齢や人種にこだわらず、創造性や革新的思考のできる人材を尊重しなければ国際市場で戦えない」と苦言を呈した。
 そして「日本の文化遺産を受け継ぐ日系人は、一般のブラジル人よりも語学、生活スタイルなどの面でより多くの選択肢がある。日本語もマスターし、グローバルな舞台で更に活躍してほしい」と激励した。