「デカセギ」から「在日ブラジル人」へ
ついつい「デカセギ」という言葉を使いがちだが、考えたほうがいい時代になったようだ。日本のポ語雑誌『アウテルナチーヴァ』21日付電子版は《在東京ブラジル総領事館で20日に開催されたブラジル・ビジネス・グループのアジア部会で「ブラジル人はもう日本でデカセギと見られるべきではない」と群馬県大泉町の観光協会副会長が認めた》と報じた▼大泉町は90年代にブラジル人居住者が人口の10%を超えて〃ブラジルタウン〃と呼ばれるようになり、近年は東京から日本人がバスツアーを組んで観光に訪れ、ブラジル料理を楽しんだりする場所として有名になった▼同グループは06年に米国南フロリダ州在住のブラジル人企業家が始めたもので、昨年9月に日本にアジア部会(橋本秀吉部会長)ができた。同記事には5月までに100会員を目指すとある▼思えば、1985年頃から顕著になった訪日就労から、今年で実に「30年」が経った。人間ならとっくに成人を過ぎている。最盛期の08年時点で31万人以上いた在日ブラジル人は、同年末のリーマンショック、11年の東日本大震災という激烈なふるいにかけられ、今は18万人にまで減った。その結果、かつては一時滞在ビザが大半だったが、今は過半数が永住ビザ所有者という時代だ▼「デカセギ」という言葉には「数年間の工場労働者」という印象が付きまとうが、実際の在日一世には商店経営者や自営業者、大学教授、二世には大学を卒業して日本人と同じように企業に就職するものも増えている。いつまでも「デカセギ」と表現していたのでは、実態にそぐわない―との冒頭の意見は、確かにもっともだ。(深)