ブラジルの金言「金(かね)には匂いがある」

 当地政治評論家は「金には匂いがある」(Dinheiro tem cheiro)とよく言う。大金がプンプンする場所には、分け前にあずかろうと汚職政治家などが群がることを揶揄した言葉だ▼本来は、財政健全化に務めて増税したローマ皇帝ウェシパシアヌス(紀元後69―79年在位)が有料の公衆便所を設置したときに、政敵から嘲笑され、息子までが反対したため、皇帝が公衆便所で稼いだ金貨をその鼻先にかざし、「お金に匂いはない」(o dinheiro não tem cheiro)と言ったのが元とされる▼当地の蛍は尻でなく頭を点滅させるように、いろいろなものが逆転するが、言葉もしかり▼ペトロブラス(PB)のグラッサ・フォステル総裁辞職の発表直後、経済評論家のカルロス・サーネンベルグは「彼女が在任した3年の間に、ペトロブラスの株価は3分の1に、負債は3倍近くになった」とCBNラジオで糾弾した▼ラヴァ・ジャット作戦第9弾が5日から始まり、株価暴落の一因となった汚職政治家を洗い出している。横領金額は少なくとも21億レアル(約900億円)というから呆れる▼PBの市場価格は08年にはマイクロソフトを抜いて米大陸で3位、11年には石油会社世界5位となり〃金の匂い〃を振りまいた。でも岩塩層下油田採掘を巨額自己投資で行う方針などにより、13年10月にメリル・リンチ社は「世界で最も借金漬けの会社」に降格、同作戦が止めを刺した▼〃群がった〃疑いの人物まで加わってPB両院調査委員会(CPI)を今週設置した。昨年末終了したばかりの同CPIは何だったのか? 実は隠ぺいするためのなのか。もしやここでも逆転が…。(深)