次代につなぐ抗議行動の伝統

 15日午後2時過ぎ、サンパウロ市のリベルダーデ駅で地下鉄にのると、セレソンのユニフォームを着て国旗を持つ人が異常に多かった。駅で止まるたびに、どんどん車内が黄色くなる。パライゾ駅の乗り換え時、到着した車両はすでに満員で、しかも真っ黄色だ▼ドアが開くとスゴイ声量で「ジウマ出てけ!」と大合唱、壁や天井をゴンゴン叩いて音頭を取る。ホームの乗客もそれに合わせて唱和を始め、すっかりデモ開始だ。明らかに昨年のサッカーW杯のブラジル代表の試合のとき以上の盛り上がりだ。なんとか乗り込むと、今度は「エイ、ジウマ、ヴァイ・トマ・ノ・◎―!」の大罵声の連呼と「ブラジル人の誇り」の大合唱。大統領には天国と地獄だ▼ブリガデイロ駅で降り地上に出ると、思いのほか家族連れや高齢者が多く、まるで田舎のブドウ祭り会場に来たようなのどかなさを一瞬感じた。でもすぐに「ジウマ、バンジーダ。ヴォセ・エスタ・フジーダ!」(ジウマは悪党、お前なんかクソ食らえ)としっかりと韻を踏んだリズミカルな罵声が大群衆から湧き出て、抗議集会だと思い知らされた▼それにしても彼らの罵声のセンスは絶品だ。激しさの中にどこかユーモアがあり、思わず笑いが漏れる。老若男女が歌うようにスローガンを大合唱し、実に楽しそうに溶け込む▼そんな道端で品の良いお婆さん二人が「今日はとっても良い日だわ」と、元気のいい若者を見ながら微笑んでいる姿がとても印象的だった。多くの家族連れも、この〃民主主義の大祭典〃の光景を子供の記憶に焼き付けようと思っているのだろう。誰も予想できなかった100万人の抗議行動だが、さて次は何が起きるのか。(深)