1

川柳作家 平谷伊佐さん、侍のごとく往く

 オザスコ聖西吟社代表の川柳作家・平谷伊佐さん(本名=勲、和歌山県田辺市)が2月13日に70歳でガンのため逝去された。3月の詩歌サロン「ふろんていら」44号に掲載されたものが遺作となった▼全伯川柳大会の案内に来社した青井万賀さんと斉藤晃伯(こうはく)さんは、「まだまだ油が乗っていて、これからという年だったのに」とその死を悼む。二人によれば、平谷さんは死の直前、同吟社の月報で「お迎えは どこの国から 来るのだろう」などと、今思えばまるで死期を予期していたかのようで、なおかつ移民らしい心境の作品を発表していた▼一見すると頑健そうで創作意欲も衰えず、身体の不調などおくびにも出さなかった。「後になって、どこかで分かっていたのかなあって思った。彼が朝からピンガを飲んでいたのも、痛みを和らげるためだったのかも」と二人はしみじみと回想する▼死の当日、平谷さんは入浴して体を清めると、床に入り、そのまま静かに息を引き取ったという。その様子を語り終えた斉藤さんは「生きるのは難しいけど、死ぬのも難しい」との至言を吐き、二人で「死に際を心得た侍のようだ」と賞賛した▼服薬や手術、延命処置を重ねれば、寝たきりでも生き続けられる時代にあって、いつまでも生にしがみつく人もいれば、若くして自ら命を絶つ人や事故で突然死する人、穏やかな自然死に恵まれる人もいる▼世の中には人の数だけ生と死があるが、平谷さんのような死に方は中々出来るものではなく、その潔さはすがすがしくすらある▼「惜しまれて 余力を残して 引退する」。まさに句に描いた通りの幕引きとなった。合掌。(阿)