映画『ミッドナイト・エクスプレス』でガッカリ

 名画だと聞いていた映画『ミッドナイト・エクスプレス』(78年、アラン・パーカー監督)を先日初めて見て、ガッカリした▼固形マリファナ20キロを北米へ密輸しようとした米国人青年がトルコの空港で捕まり、刑務所で官吏に虐待され、最終的に脱獄(刑務所の隠語で〃深夜特急〃)する物語だ▼米国に逃げ帰った青年は、トルコの刑務所の酷さを暴露する本を書いてベストセラーになり、映画化され一躍ヒーローに。「実話に基づいている」なら、彼は麻薬密輸犯で、刑務所内で2人も殺した。外国でも〃正義の味方〃は悪人を殺す権利があるという考え方は、〃世界の警察官〃らしい感じがする▼70年代のヒッピー文化隆盛を経た米国はマリファナに寛容な価値観があり、麻薬厳禁のイスラム教国による禁固30年の判決は不当に見えるらしい。しかも非人道的な扱いの刑務所だから脱獄して当然という考え方は、相手国の主権が無視され、どこか傲慢な気がする▼現在からすれば、この時代から米国にはイスラム教国に懐疑的で、その主権を軽視する風潮があったことが伺える。イスラム教国インドネシアに麻薬を持ち込んだブラジル人青年が死刑判決を下され、ジウマ大統領が抗議し国交関係にヒビまで入れているのも似た構図か▼カトリックの隣国ヴェネズエラで警察が路上抗議者を弾圧して数人殺しても、ブラジルは「主権の問題」と静観しているのに、イスラム教国でブラジル人犯罪者が処刑されるのには抗議する。警官が次々に〃犯人〃を殺すのが黙認されるように見えるブラジルにおいて、「死刑」は嫌がられるのは、一体なぜなのだろう。(深)