約2年半で153カ所も=前人未到の集団地訪問記録=福嶌総領事、5月初旬に帰国

 各地の日系集団地を精力的に訪ね、コロニアから広く親しまれた在聖総領事館の福嶌教輝総領事(ふくしま・のりてる、56、兵庫)が、5月初旬に帰国する。同総領事館の管轄区域である「聖、南麻2州の7連合会の傘下団体をすべて制覇するのが目標だった」という。約2年半年の任期中に訪れた移住地数はなんと153カ所にのぼる。訪問を予期していなかった各地から感嘆の声が上がっていただけに、120周年記念事業開催を待たずしての異動は残念なニュースとなった。

 153カ所尋ねたのは集団地の実数で、「何回も行った所を入れたら延べ数は200カ所どころじゃない」と中山雄亮副領事は顔の前で勢いよく手を左右に振った。
 3年半の任期で106カ所を回った大部一秋前総領事(故人)を優に超える、かつてないペースだ。当地在住者でもまず訪ねたことのない、前人未到の訪問記録といえそうだ。
 在アルゼンチン大使館勤務、中南米第一課長、欧州局参事官、スペイン公使などを経て、2012年9月に着任。気さくで社交的な福嶌総領事は、たちまちコロニアの人気者に。一度会うと正確に人名を記憶する特技には、コロニアの重鎮も感嘆の声を上げていた。
 同総領事は「もう日本から忘れ去られていたと思っていたおじいちゃん、おばあちゃんが、『初めて来ていただいた』と涙された。とにかく歓迎してもらった」と懐かしそうに回想する。
 「ボロボロでも小学校や会館が今も残る移住地もあれば、立派な野球場やサッカー場がいくつもある移住地もあった」とその多様性に目を見張り「焼きそば祭りをやったり運動会をやったり、みな何か持っている。イベントをやって収入を得て本当に涙ぐましい」とその息の長い取り組みと生命力に感心していた。
 7連合会の傘下団体制覇の目標達成はならなかったが、訪問にたちあった市長が市税値下げやイベント支援を約束するなど、様々な移住地が総領事来訪に伴う相乗効果に恵まれた。来訪時に吸い上げたニーズが草の根無償資金協力の実施にも繋がった。
 実は2月のカーニバル真っ最中に異動が通達されていた。「踊りながら『これが最後』と思っていた」と明かす。
 「ジャパン・ハウスのオープニングまでいて、もう1年間くらい関わりたかった」と名残を惜しみ、「大きく報道されるような120周年事業を準備している。私も9月12日の花火を見に戻って来たい」と話した。
 日系33団体共催による総領事の送別会は、23日午後7時半から文協多目的ホールで予定されている。

【大耳小耳コラム】

 地方の移住地をつぶさに回った福嶌教輝在聖総領事。前人未到の取り組みに、着任当初は各移住地から次々と、総領事来訪の記事が編集部に送られてくるほどだった。管轄区域の7連合会傘下団体を全制覇するとの目標は、ノロエステ、ヴァーレ・ド・パライバはみごと達成、聖南西は「のこり後五つだった」という。前任の故・大部一秋氏ともに、〃総領事の鏡〃とも言うべき存在だった。コロニアにとっては幸運だったが、後任にはかなりのプレッシャーになるかも。