6キロの麻薬で支払ったもの

 インドネシアで29日未明(ブラジルでは28日午後)に銃殺刑となったロドリゴ・グアルテさん(42)の遺体が3日午後、パラナ州クリチバの墓地に埋葬された。6キロのコカインを持ち込もうとしたとして05年に死刑判決を受けたが、統合失調症を理由に処刑延期を図った遺族の努力も水泡に帰した▼グアルテさんと最後の時を過ごした神父は、本人は処刑前日になっても霊の声を聞いており、自分が処刑される事を理解するどころか、自分はブラジルに戻ると言い続けていたという。同日も1時間半かけて説明した神父は、本人も処刑される事を理解したと思っていたが、独房から引き出され、鎖をかけられた時、「自分は処刑されるのか」と聞いてきたという▼本人は一言「それは間違っている」と呟いて連行され、柱にくくりつけられた時も再び、「これは間違っている。自分は小さなミスを犯しただけだ。そのせいで死ぬはずはない」と言ったという▼統合失調症故に霊の声を聞き、「処刑はされない。1年でブラジルに戻る」と言い続けていたグアルテさんが死の直前、「間違っている」と悲しげに言ったという事実は、病気や責任能力、人の命で償わなければならない程の罪とはといった疑問を投げかける▼麻薬による被害者を出さないよう、麻薬取引を厳重に取り締まるとの主張や、罪の責任をとらねばならないという論理も解る。だが、同じ日に処刑されるはずだったフィリピン人女性が「12歳と6歳の子供にはもう会えないし、子供達も2度と自分を見る事はない」と号泣するのを見た人全てが、その光景に納得できずにいた事を同国関係者はどう受け止めているのだろうか。(み)