『楽書倶楽部』創刊5周年=最新27号は大部156頁=チリ、ミナス州からの寄稿も

 創刊して3号ほどで休刊・廃刊する雑誌が多いことを〃3号雑誌〃というが、雑誌『楽書倶楽部』は創刊5周年を迎えて第27号を発刊し、その記念親睦会を25日に文協の県連会議室で開催した。つぶれる雑誌や新聞があっても、創刊することは珍しい昨今、5年続いてなお執筆陣を増やしているのは異例だろう。当日は執筆者や愛読者ら60人以上が集まり楽しい一日を過ごした。

 日毎叢書企画出版を共に興した野口浩さんが10年に亡くなった後、前園博子さんが主宰する形で、石田勉、山本ロゼリー、大羽豪三3氏らと一緒に発行してきた寄稿誌だ。
 隔月発行として10年4月15日に28頁で創刊。27号では49人もが顔写真と略歴入りで執筆し、156頁となった。手作り製本のため150部限定。寄稿者にはチリ在住の吉村維弘央(いくお)さん、ミナス州在住の荒木昭次郎さんら遠方からの投稿も多いのが特徴だ。
 最初に司会の松井英俊さんは亡くなった関係者の野口浩、小池まこ、渡辺光、山路正芳(まさよし)、中村勉(べん)、後藤宗治(むねはる)、高橋祐幸(ゆうこう)7氏に哀悼の意を表して黙祷を捧げた。
 前園さんは「ずっしりと厚い最新号を手にして感無量の思い」と挨拶し、石田さんも「せいぜい続いて2、3年と思っていたのが5年にもなった」と感慨ぶかげ。同人代表で広川和子さんが「前園さんの心のこもったおもてなしの姿勢は、本の細かい部分にも反映されている」との感想をのべ、愛読者代表の井料賢治さんは「2日で読み通し、その後気に入ったものを読み返す。これからも長く読ませてもらいたい」と要望した。
 卒寿者表彰に続き、本紙の深沢正雪編集長の講演「日系社会の動向」が小一時間行なわれ、谷口範之さんの乾杯の音頭で昼食になった。その後、JICAシニアボランティアの与那覇博一さん(介護士)が、ユーモアたっぷりの語り口で手品を披露し、会場を沸かせ、「弟子希望の方には、ぜひお教えしたい。ぜひ楽しませる側に」と呼びかけた。
 知人に誘われて初参加の石井かず枝さん(75、二世)は「息子から昔の思い出を書き残して欲しいといわれていたので、これを機会に何か書ければと思っています」とのべた。前田安隆さん(79、佐賀)は「会費がなく、書ける人が書くスタイルが近づきやすい。5年も続くのは大したもの」と評価した。
 前園さんは「新しい人を歓迎しているので、ぜひ書き送ってください」と呼びかけている。日毎叢書企画出版(電話=11・3209・4954、送付先Rua da Gloria, 332 3and. s/32 CEP:01510-000 SãoPaulo –SP)

■ひとマチ点描■86歳の手習いで空手

 「強盗に縛り上げられて、ピストル突きつけられ、耳元で『カネ出せ』といわれた。何にも抵抗できなかったのが悔しくってね、プライドが許さないわよ、そんな理不尽な。だから半年前から始めたの」
 そういって颯爽とポーズを決めたのは、86歳の宮川節子さん(千葉)。『楽書倶楽部』創刊5周年親睦会での一幕だ。強盗はバイア州の農場での出来事で、その後、サンパウロ州アララクアラ市の娘と同居する。
 週2回、2時間ずつ特訓中で、鼻息も荒く「今年中に昇段するわよ」と気丈に宣言する。「でもね、ホントは孫から日本語で『バアチャン、ガンバレー!』といわれるのが楽しみ」と相好を崩した。(深)

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 『楽書倶楽部』の石田勉さんは挨拶の中で「執筆者の中から、将来の芥川賞、直木賞候補が現れるかも」と会場を沸かせ、「本誌にも賞を作って競い合ったらどうでしょう。芥川ならぬ、〃奇跡の清流〃と呼ばれる高知県の仁淀(によど)川賞では?」と呼びかけた。我こそはという方はぜひ投稿してみては。ついで、といっては何ですが本紙「ぷらっさ欄」への投稿も大歓迎中!