移民史料館8階を新装=石川達三コーナー設置も

 文協ビルのブラジル日本移民史料館8階「戦前日系社会」が新装され、また新たに「石川達三特別コーナー」が設置された。先月23日には新装披露式典が執り行われ、関係者ら40人ほどが出席した。
 同史料館運営委員会の山下リジア副委員長は挨拶で、新装の経緯を「2008年の移住百周年時にブラジル社会から取材された時、『なぜリベルダーデは日本人街になったのか』との質問が多かった。その需要に応えるため新装を決めた」と語った。
 石川達三特別コーナーの設置については、「最近、日系人だけでなく、ブラジル人にも日本文学に関心を持つ人が増えてきている。そんな中で、サンパウロ人文科学研究所の鈴木正威さんから『石川達三の芥川賞受賞がニュースとして取り上げられた時の文藝春秋を持っているので、展示してはどうか』という話があり、設置を決めた」と説明した。
 また同コーナーの準備期間中に私用で訪れた秋田県秋田市で、偶然に同市に所在する中央図書館明徳館の「石川達三記念室」の存在を知り、実際に訪れたことで多くの資料を寄与されたとのエピソードを語った。
 最後に、「明徳館の協力やブラジルヤクルト商工株式会社の出資があって、新装を執り行うことができた。心から感謝したい」と関係者に謝辞を述べた。
 来賓として、ブラジル日本文化福祉協会の木多喜八郎会長、人文研の宮尾進顧問、在聖総領事館の飯田茂領事部長、ブラジルヤクルト商工株式会社の石嶋勇総取締役が出席し、祝辞を述べた。
 今回の新装を支援した人文研の宮尾氏は「一世が減少し、混血化も進んでいく中で、日系人の歴史を残すために同史料館は重要な存在である。将来的には8階だけでなく、全面的な改装をすべき。その際には協力を惜しまない」と語る。
 なお、同日予定されていた史料館カタログ出版会は、諸事情により見送られた。