懲罰は犯罪を減らすのか

 成人年齢引き下げ(16~18歳の重犯罪に対する懲罰を成人並みに引き上げる)や重罰化問題で、世論が割れている▼青少年が殺人などの重犯罪を犯しても最長3年間、少年院にいれば自由になれるため、青少年に犯行を促す人がいる、本人も責任の重さを感じず、罪を繰り返したりするというのが賛成派の主な言い分だ。一方、成人年齢引き下げや重罰化は犯罪者予備軍を犯罪者そのものにする可能性がある事や、刑務所の絶対数不足などで状況が悪化しかねない事などを反対派は指摘している▼下院で1度否決された成人年齢引き下げ法案が翌日承認された事も問題だが、少年院の再教育(社会化)プログラム改善にはどれ位の努力が払われてきたのか。貧困などが原因で基礎教育さえ受けられない青少年をきちんと教育する方策はないのか▼18歳になる数日前の若者に息子を殺された親が、犯人が2年足らずで自由になった事に納得できないという例がある一方、窃盗罪で少年院に入った17歳の息子を、再教育の名の下で行われた拷問で失った親もいる▼青少年が麻薬に手を染めぬよう教育する、食べるためや生き残るために盗まねばならないような状況下の家庭を減らしたり、親の再教育などの方法で重犯罪発生を未然に防ぎ、加害者となった青少年を真の意味で更生させる道はないのか▼米国には犯罪発生率が非常に低いスラムがあり、生徒をわが子のように愛する教師の存在が鍵だったとの調査結果が報告された事もある。虻蜂取らずになっては意味がないが、成人年齢引き下げや重罰化以前にやるべき事、やれる事があるはずだと考えるのは、人間が甘い証拠なのだろうか。(み)